【デーブ大久保コラム】ホームラン打者は独自の技術があります。そこにパワーを加えたのが大谷翔平です
【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】 ホームラン打者特集だそうですね。私が小さいころに最初に認識したホームラン打者が王さん(王貞治、現ソフトバンク会長)でした。小学5、6年のころです。「この人、たくさん本塁打王に輝いているから、名前が王さんなんだ」と思い込んでいた時期でもあります(苦笑)。 【選手データ】王貞治 プロフィール・通算成績 そのあとに思い出せるホームラン打者は、私自身巨人ファンということもあり、原さん(原辰徳、前巨人監督)でした。キレイな放物線を描くホームラン打者というイメージです。実際にはそこまで大きな体ではないのですが、テクニックで打つというイメージです。 1992年のシーズン途中に巨人に移籍してから一緒にプレーをさせてもらいましたが、右足にしっかり体重をかけて、そこからクルっと腰を回転させながら、インパクトの瞬間だけバットを加速させるように力を入れる打ち方でした。「インパクトの瞬間だけグッと力を入れるんだよ」とよく話していましたね。 私自身も同じような打ち方をする打者でした。飛ばすのにテクニックを使っていたんですよ。だからキャンプ中に特打を課せられても、疲れることはないんです。全身でフルスイングするわけではなく、体のパワーをためて、軽くバットを振りながらパーンっとボールをはじくんです。それでサク越えを続けるので、コーチも何も言えないんです。 同じテクニックで打つホームラン打者でもまったく違うのが落さん(落合博満、元中日監督)でした。独特の神主打法ですよね。オープンスタンスから、右中間へのホームランを打つイメージが皆さんにもあるはずです。落さんの打撃の基本は、私の解釈では左肩が絶対に開かないことです。そこを我慢しながら打ちに行き、ボールとバットとの距離を取って、そこから打っていく。だから飛距離が出るんです。 あと2人、西武時代で身近にいたホームラン打者が、幸ちゃん(秋山幸二)とキヨ(清原和博)でした。幸ちゃんは自分自身の努力でつくったホームラン打者です。打ち込み、打ち込みでコツをつかんだ打者なのです。キヨは中学生のときですかね? グラウンドの大きさの関係などで、右に打つ技術を身に付けたとか。身近で言えば、さんぺいこと中村剛也もテクニックで打ってきれいな放物線を描く打者ですね。 このような打者を凌駕(りょうが)してしまったのが、ドジャースの大谷翔平です。テクニックもありながら、現代のホームラン打者はやはりパワーがより必要なんだ、ということを知らしめてくれています。 もちろん、日本ハム時代に培った技術があり、そこにメジャーで通用する、いやそれ以上のパワーを目指したことで身に付けたパワーがあるからこそ、2年連続の本塁打王になっているわけです。やはり、個人的には飛ばす技術がないと、本塁打は生まれません。そこにパワーが加われば無双になります。日本人のホームラン打者の究極の形を大谷が見せてくれているのかな、と思いますね。
週刊ベースボール