筋トレ“10回×3セット”だけでは効果は下がる。筋肉を付けるために効率的な方法をプロが伝授!
筋トレといえば「10回×3セット」を儀式のように繰り返している人は少なくないハズ。しかし、その根拠を理解しているかと聞かれると疑問が残るのではないか。
そこで今回は、海外の論文なども読み込み、圧倒的なエビデンスを提示して、効果的なトレーニング法を発信している「Training Science」の代表、佐々部孝紀(ささべこうき)氏に、本当に筋肉に効くトレーニングについて教えていただいた。
「カッコいい体」と「健康」を同時に手に入れるには?
ーー筋トレをする理由として、健康維持だけでなく「カッコよく見せたい」という動機もあると思います。目的が異なることで、筋トレの方法も変わりますか? 両者は重なるところもあります。「カッコいい体」を手に入れるためには、負荷をかけて筋肥大させることが必要で、効率を考えると、自分が扱える最大の重量の7~8割程度でウエイトトレーニングを実施するのがおすすめ。 ウエイトトレーニング自体には、糖尿病などの生活習慣病の予防の効果もありますが、体脂肪率減少のために過度な食事制限をすると逆に健康を害することもあります。 また、血管の健康のためには、先ほど示した最大の重量の7~8割の負荷よりも、もっと低い強度で実施したほうが良いというデータもあるため、自体重のトレーニングにもメリットはあると考えられます。 ーーでは、高負荷のウエイトトレーニングは避けて、自体重で負荷をかけていったほうが健康維持と「カッコいい体」の両方が手に入るということでしょうか? 一概にはいえませんが、たとえば週1~2回はウエイトトレーニングで筋肥大を目指しつつ、もう1~2日は低負荷の自体重をする。あるいは、有酸素運動をバランスよく取り入れるという方法もあります。
「筋トレ10回×3セット」は“ナンセンス”なのか?
ーー筋肉をつけたい人たちの中には、「10回×3セット」の筋トレを習慣にしている人が多いと思うのですが、これはそもそも正しいトレーニング法ですか? トレーニングの大原則として、同じ刺激を与えると身体が慣れてしまうという点があります。実はウエイトトレーニングにおいては、「10回実施する」のは多めの回数であり、強度としてはそこまで高くしづらいんです。 10回3セットの筋トレをやり続けていると、身体が刺激に慣れて、筋肥大や筋力向上が停滞してしまいます。それを例えば、5回で実施すると、10回のときよりも重たい重量を扱えますよね? 違う刺激を加えた後で、また10回で実施すると、前よりも重たい重量を扱えて、トレーニング効果が大きくなります。10回で実施するのが良くないわけでなく、10回でずっとやり続けるのは効率的ではないというニュアンスですね。 ーー自重トレーニングだと高強度はなかなか難しいので、やはりウエイトトレーニングが欠かせないということでしょうか? そうともいえません。アスリートでも遠征先でバーベルなどの器具がないこともありますし、アイデア次第で高負荷にすることはいくらでもできます。自重トレーニングでも、限界まで追い込めば十分に筋肥大の効果は得られますよ。 ただ、30回も40回も繰り返せる人はなかなかいないかと思います。子どもを背中に乗せるとか、パートナーに背中を押してもらうといった方法であれば、強度を上げる分、回数を減らせて効率よく筋肥大できます。 ーー回数に変化をつけたほうが良いということは分かったのですが、やはり「3セット」が理想ですか? 「3セット」が一般的に浸透しているようですが、私がアスリートを指導するときには「5セット」や「6セット」にすることもあります。理由は、1週間トータルでおおよそのセット数を決めて、その後に各日のセッションに分配しているからです。 1週間トータルで約10セットと考えたら、週2回トレーニングできるなら1回5セット、週3回トレーニングするなら1回3セット、という感じで変化させることもありますね。 ただ、おおむね週2~3回するなら1回あたり3セットやっていれば効果は出るという意味では、妥当なセット数ともいえますね。