金足農・吉田輝星が挑む「甲子園優勝投手はプロで大成しない」のジンクス
ここ20年で、ただ一人、現在NPBのユニホームを着ていない正田も故障に悩まされ続けた。中日の小笠原も高校時代からだましながら投げていた左肘のネズミの除去手術をプロ入り後に受けたし、島袋も大学進学後、しばらく故障に悩まされた。高橋、今井の西武コンビも故障でペースダウンを余儀なくされている。 近年は多くの高校が複数投手制を敷き、エースが一人で予選から全試合を投げるという事態は減り、科学的トレーニングの発展と、肩肘のケアの手法が広がり、故障発生のリスクは回避できるようになってきている。それでも、真夏の甲子園で疲弊し、疲労からフォームを崩し、それが原因で優勝投手の肉体に大きな悪影響を与えるリスクが完全に解消されたとは言えない。2013年の夏ではなくセンバツ大会だが、愛媛・済美高の2年生投手、安楽智大(楽天)が、3日連投を含む5試合に登板して実に772球を投げ、このとき右肘靭帯に異常が発生していた。 今回、吉田は秋田県大会も5試合をすべて一人で投げてきた。それだけにネット裏のスカウト陣も不安視するのだが、片岡さんは、こうも見ている。 「甲子園の優勝投手に確かに成功例は少ないが、そもそもピッチングの上手い投手が、優勝まで上り詰めるという傾向もあって、本当の実力と優勝の看板が比例していなかったという実情もある。松坂やマー君の成功例を見ればよくわかる。力のある投手ならジンクスは関係ない。吉田は、頭がかなりいいので、この日も、スピードを抑えて、ボールを低めに集めて負担のかからないピッチングをしていた。球数もずいぶん減っていた。肉体のバランスがよく、投げ方がいいので、故障を発生するリスクが少ない投手でもある。私は、吉田は、“優勝投手は大成しない“というジンクスがあてはまらない投手だと見ているんだがね」 もちろん決勝のマウンドに向かう吉田には、そんな不確定な未来の話などまったく頭にないだろう。 「ここで終わりじゃありません。最後まで笑っていられるように自分が(大阪桐蔭を)ゼロに抑えたいです。絶対に優勝します」 吉田vs大阪桐蔭の“半プロ打線”の行方が注目の決勝戦は、本日午後2時プレーボールだ。