「校歌の質問はタブーなのか…」迷う現地記者に京都国際の選手・スカウトが口を開いて…「学校に言うても動かないし」高校野球ウラ話
それでも有力選手が集まる理由
これだけ特殊な学校で、なぜ、こんなにも優秀な人材が集まってくるのか。 2日後、準々決勝の智弁学園戦に勝利したあとの取材で、私は生徒募集を担当している岩淵雄太にへばり付き、話を聞き続けた。ドイツ製の丸眼鏡にツーブロック。ニックネームは「チャラ男ちゃん」だと話す岩淵は、人懐こく、自分の言葉を持っている人物だった。 ――生徒を集めるの、大変じゃないんですか? そう問うと、岩淵は待ってましたとばかりに語り始めた。警戒心を解くための最初の説明がキーなのだと言う。韓国の歴史の授業があるが、反日教育ではないこと。校歌に抵抗があるのなら歌う必要はないこと。そして、日本人である自分がこの学校のために尽力しようとしていることが「あやしい学校」ではないことの何よりの証明なのだと懇々と説くのだという。 そして、最大の疑問をぶつけた。韓国語の校歌を変えようとは思わないのか、と。京都国際のイメージを決定づけているのは、何よりもまず校歌だ。 実は岩淵らスタッフは変えるために何度となく学校に掛け合ったが、理解者も多いものの、なかなか変更までは至らないのだという。 「いろいろとあるんっス」 もはや日本人が占める割合の方が多いとはいえ、理事長も校長も韓国人だ。それはいろいろあるのだろうと推察された。
小牧監督「学校に言うても何も動かないし…」
岩淵は校歌にまったく思い入れがないのだと語った。監督の小牧憲継(41歳)も同様だった。 「僕もまったく興味はないです。この学校に十何年いますけど、未だに何を言ってるのかわからないので。覚えようとも思っていません。学校に言うても何も動かないし、変わらないし、無視されてしまうので。その件に関しては学校に聞いてもらった方がいいと思います。はははははは」 ――でも、優勝したら、また違って聞こえるものなのでしょうか。 「いや、優勝したことの余韻に浸ることはあっても、校歌に関しては何もないでしょうね。ははははははは」 甲子園で勝って校歌を歌う――。 これまで何度も聞いてきた夢の形だ。それは高校野球における一つのクライマックスなのだとさえ思っていた。 だが、京都国際にその時間は与えられていなかった。 〈つづく〉
(「野ボール横丁」中村計 = 文)
【関連記事】
- 【つづきを読む/#2へ】「やってもーたー!全国に恥を…」京都国際の主将が決勝後の控え室で…“テレビに映らない”姿を記者が目撃「選手が明かした校歌のこと」
- 【つづきを読む/#3へ】京都国際の監督に直撃「それは書いてもらっていいです」優勝翌日、密着記者に明かした“本音”「PL学園の校歌をもらおうかって」関係者が驚きの提案
- 【現地の写真】「京都国際と関東一…“試合後のハグ”が青春で泣ける」「試合後に泣き崩れて…優しく抱き寄せる先輩」“テレビに映らない”京都国際と関東一の決勝…ナンバー撮影の現地写真を全部見る
- 【話題】「あやしい学校ではないですよ」京都国際スカウトが現地記者に明かした苦悩「いろいろあるっス」優秀な中学生にどう声をかけたのか?
- “甲子園の魔物”説も…「うわぁぁって…人生で初めて見た」大社ベンチも驚いた早稲田実の奇策「あの9回裏直前にハプニングがあった」現地記者が見たウラ側