ルーティン業務から営業職への異動で適応障害に気づいた30代女性…グレーゾーンが抱える「生きづらさ」
30代女性の事例
発達障害グレーゾーンの多くは、大人になってから環境に適応できない自分に気づくため、グレーゾーンと分かった時点で適応障害の疑いがあるともいえます。 ここで医師から適応障害と自閉スペクトラム症の傾向がある(=グレーゾーン)と言われた例を紹介します。 適応障害になったFさん 総務部にいたFさん(女性30代)の仕事は、社員の勤怠などを入力するルーティンワークが中心で、地道な作業が好きな彼女にとって働きやすい職場でした。 しかし、会社のトップが代わったことで従来のシステムや方針が大きく変更され、Fさんのやっていた仕事は外注されることになりました。 新しいトップは、社員にいろいろな業務を経験させるという方針で、Fさんは営業部門へ異動となりました。しかし、内勤しか経験がなかったFさんは緊張の連続となり、お客様と円滑にコミュニケーションをとることが難しく、それが原因でクレームがくるようにさえなりました。 異動から2か月が過ぎた頃、Fさんは出社前に腹痛が始まるようになり、遅刻も多くなっていきました。
環境の変化に適応できず…
食欲がなくなり、仕事への意欲も下がり、突然涙が出てくることもあったそうです。近所の内科で整腸剤を出してもらいましたが、服薬しても治らなかったため、心療内科を紹介されました。 これまでの経緯を話すと、「適応障害」と「自閉スペクトラム症」の傾向があると言われました。自閉スペクトラム症には、興味の対象が限られていたり、イマジネーションやコミュニケーションが得意でなかったりという特性があります。 Fさんは、営業職になって外部とのコミュニケーションの機会が増えたことでストレス過多となり、腹痛や勤怠の乱れというストレス反応が現れました。 環境への適応が難しくなったということです。グレーゾーンであっても、その環境に適応していれば、カウンセリングや医療機関の受診はあまりしません。 就職や異動など環境の変化があり、頑張っても適応できない、あるいは適応しようと頑張りすぎて抑うつ状態になった人たちがカウンセリングにきて、適応障害だけでなく、発達障害グレーゾーンでもあったというケースが非常に多いのです。 以上のようなことから、グレーゾーンの特徴の1つに適応障害があるということもできるでしょう。 舟木彩乃 ストレスマネジメント専門家。公認心理師・精神保健福祉士。博士(ヒューマン・ケア科学/筑波大学大学院博士課程修了)。カウンセラーとして約1万人の相談に対応し、中央官庁や地方自治体のメンタルヘルス対策に携わる。
舟木彩乃