韓国の弾劾訴追の混乱、日米韓の安保協力にも影 与党幹部「尹大統領には関係深める信念」
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領への弾劾訴追をめぐる政情の混乱は、日本の安全保障戦略にも暗い影を落とす。日本政府と米韓は首脳間の信頼関係のもと、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発や中国の動向をにらんだ安全保障協力を進展させてきた。しかし日米に続き韓国も首脳退陣となれば、3カ国協力は停滞が避けられない。 「次の韓国大統領が誰かによるが、革新系野党が政権を取れば、日米韓の安全保障協力は今までのようにはいかないのではないか」。日韓議連に所属する与党議員はこう嘆息した。 日韓関係は尹政権が発足した2022年5月以降、急速に改善。いわゆる徴用工問題では韓国政府が昨年3月に解決策を示し、レーダー照射問題では今年6月の日韓防衛相会談で再発防止策に合意した。与党幹部は「尹氏は韓国国内で批判があっても、日韓関係を重視してくれていた」と高く評価する。 特にレーダー照射問題での合意後、日米韓は共同訓練「フリーダムエッジ」を2回実施し、日韓防衛実務者対話も9年ぶりに再開。9月の日韓首脳会談では第三国に滞在する日韓両国民の保護に関する協力の関係覚書で合意するなど、具体的な協力体制の構築を進めてきた。 与党の閣僚経験者は「尹氏には日米韓の協力を深めようという信念があった。日米トップが交代した後は、尹氏に3カ国の安全保障協力をリードしてほしかった」と残念がる。防衛省幹部は「政治がどうなるかは分からないが、われわれ実務屋はするべきことをきっちりするだけだ」と語る。(大島悠亮)