サラリーマン生活に挫折、イラストレーターに転身した「宮内ヨシオ」の創作の原点…NHK『いないいないばぁ!』のアニメも手掛けた
美しいものは、生きてゆく力を生み出す
『生きてるってどういうこと? 』の中に、美しいものを見ることが生きる力を生み出すという一節がある。 * なにかをうつくしいとおもうと、 わたしたちはそれがすきになる。 なにかをうつくしいとおもうとき、 わたしたちはうれしい。 うつくしいものは、わたしたちのなかに、 いきてゆくちからをうみだす。 うつくしい! 『ブリタニカ絵本館 ピコモス25 うつくしい! 』 (日本ブリタニカ)より 谷川:自然が、僕の創作の原動力になっています。ことばの世界というのは、一種人工的でしょう。だから、どうしてもそのことばの世界のもとにある芸術にふれたくなる。それが究極的には自然なんですよね。自然とのつながりって、年をとればとるほど強くなりますね。 宮内:僕の場合は、五感というか、見たり聞いたりすることですね。 谷川:感覚ね。 宮内:そう、感覚です。それが強く感じられれば感じられるほど、アイデアが湧くんです。ただ、アイデアって、出ないときは出ないんですよね……。でも、締切があるから、絶対に描かなければならない。 そういうときは、外に出て、歩いて、いろいろな色を見て、ときどき木に触ったり、匂いをかいだり。そうやって何かを引っ張り出してくるみたいなところがあります。無理やり感でもあるんですけど。 谷川:無理やりではなくて、それが自然なんじゃないですか。 宮内さんの絵は、植物が実際より大きかったり、動物が印象的に存在していたりする。実際の動物とは違う、独特な色や柄のものも多い。 宮内:スケッチに行くとか、野生の動物を観察するなどということはしないんです。 動物の資料は集めるのですけれど、それを見て描くと、描写しすぎてしまって、自分の形にならない場合があるんですね。だから、脚の数を間違えないようにするなど、最低限のことだけを抑えて、あとの形は、自分の頭にあるものだけでつくりたいんです。 いろいろな動物が登場しますが、僕がいちばん好きなのは猫です。子どものころに実家にもいましたし、今も飼っています。猫の生活スタイルも好きですね。 この「さくらの猫」のように、模様があったりする動物もいます。絵は自由にできる部分がすごくあるんです。僕は、そういうところを面白がっているんですね。もともと美術大学の染織デザイン専攻を卒業していますから、文様にも興味があって、どこかに装飾的な部分を入れることが多いですね。