「クレヨンしんちゃん」からヒントを得た…「6年で年商43億円」30歳社長が作ったアパレル会社が急成長するワケ
■社員の才能を見極め、成長できる環境を整える 【澤円】本当に強靭な組織をつくるには、組織やチームを引っ張っていくリーダーの役割やあり方も重要です。リーダーシップについてはどう考えていますか? 【片石貴展】わたしはよく、いわゆる「カリスマ経営者」っぽく見られがちなのですが、実際はサーバントリーダーシップに近いスタイルだと思っています。なぜなら、わたしがブランドを創造し、社員を引っ張っているわけではないからです。そうではなく、みんながやりたいことを叶えられる場所を用意し、支援し、そこに集う熱量によって会社を成長させるタイプなのです。 人の才能を発掘し、成長していく様を見るのが好きなんです。あえて「つくる」という表現をしますが、「ものをつくる人をつくる」ということが、自分のもっとも才能がある部分だと認識しています。なぜそう断言できるのかというと、繰り返しになりますが、やはりそれがいちばん好きなことだからです。 ■毎日社員と顔を合わせて「観察」する 【澤円】メンバーそれぞれのオリジナルな才能を発掘し、人間的成長を促していくには、一人ひとりをしっかり「観察」する必要もありますよね。 【片石貴展】おっしゃる通りです。観察して、いい部分は伸ばしていき、改善したほうがいい部分はきちんと指摘をする。それは、単に経営のダッシュボードを眺めているだけではできません。だからわたしは、毎日出社して社員と顔を合わせますし、オフィスもワンフロアーで見渡せる構造にしています。当然、社長室もありません。 社員にとっては、いつも社長がいたらうざいとは思いますよ(笑)。「やだな」「居づらいな」と思うときもあるかもしれないけれど、物理的に可能なうちはこのスタイルを続けたいと考えています。
■部下の成長をプレゼンできない上司は上司失格 【澤円】組織内のコミュニケーションにおいて、特に「評価」などをするときに留意していることや、ルール化していることを教えてください。 【片石貴展】評価については3カ月に1回、給与改定については半期に1回、面談の機会を設けています。クリエイティブ職の評価面談にはわたしも必ず入るようにしていて、およそ30人と直接コミュニケーションを図っています。 評価の基準としては、例えばマーケティング職のプロデューサーであれば、「場づくりの力」や「磨いた技術(マーケティングの専門技術など)」、他にも「心構え」といった独自の基準を達成する必要があります。それらはマトリクスにして明確に表現し共有しています。 もうひとつ特徴的なこととして、メンバーのグレード(等級)評価の際は、対象となるメンバーとリーダー、プロデューサーやわたしを含めた役員全員が参加します。そして、みんながいる場でリーダーが提案し、最終承認するかどうかを決めているのです。 このとき、結果が出ているメンバーのグレードを上げるのを躊躇するリーダーは、全員から厳しい指摘を受けることになります。部下が成長しているのにその部分をプレゼンできない上司は、単なる保身に過ぎず、要は上司としてダメだという評価ですね。他人より自分を優先するマインドでは、そもそもプロデュースなんてできませんから。 ■「部下は上司の背中を見て学べ」は効率が悪い 【澤円】メンバーを引き上げることを怠るリーダーに対して、極めて厳しい目を向けているというのは、組織論としてとても興味深いです。 【片石貴展】部下にとって、「自分を引き上げようとしてくれている」ことが伝わるか伝わらないかは、とても大事なことだからです。「君の頑張りは理解しているから、上にも掛け合ってみるよ」なのか、「今回は足りない部分があるから、次頑張ろう」と伝えるのか。いずれにせよ、常に部下を引き上げようとするスタンスがあるかないかで、その関係性はまったく変わるでしょう。 しかもこれは、「できる・できない」の話ではなく、「やるか・やらないか」の話でしかありません。 【澤円】リーダーの意思次第というわけですね。では、経営者として、片石さんが理想とする組織像についてもお聞かせください。 【片石貴展】フラットな組織であることは重要です。必要な権限を与え、組織にとっての課題解決をすべてのゴールとし、みんなが同じ方向を向くことを前提にした組織という意味です。 大事なのは、「ことを成す」ために集中することですから、働くときはグレードなんて気にしなくてもいい。フラットに実力が評価されることも大切です。そんな組織に対する考え方を明確に定義し、必要な情報をオープンにして、瞬時に共有できる状態にしておくことが必要です。 よく「部下は上司の背中を見て学べ」みたいな考え方がありますが、もっと効率のいい方法があるということです。「言わないでもわかるだろう」ではなく、社員全員が自分たちの進んでいる方向を常に確認できる状態にしておくことが、経営や組織づくりのうえでもっとも重要だと考えています。