先輩の指示通りに動けない…「女子トーク」にも溶けこめずに孤立した「発達障害グレーゾーン」の女性が自分らしく働けるまで
職場での人間関係で相談にきたASD傾向があるIさん
Iさん(女性20代)は、有名大学の理系出身です。就職活動ではエントリーシートや筆記試験で落とされることはなかったそうですが、面接を突破することができず苦労しました。 最終的に内定が出たのは、IT系企業のSE職です。彼女は、学生時代からプログラミングなどが得意で、AIの知見も広げていました。内定先は数十名規模の中小企業で、新人のときからどんどん仕事を任せると説明されていたので、働くのを楽しみにしていました。 しかし、実際に仕事がスタートすると、人手不足でIさんのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を担当できるSEの先輩がいません。仕事は、数名の一般事務職の女性社員と一緒に、役員やSEの事務サポートばかりでした。そのため、Iさんは、得意でない事務仕事や女性社員と上手くやっていくことに、大きなストレスを感じることとなりました。 Iさんは社員の顔がなかなか覚えられず(ASDの特徴の1つです)に不自然な対応をしてしまったり、「これお願いできる?」(”これ”とは?)や「今日中に連絡しておいて」(”今日中”とは何時何分まで?)などの指示が具体的に理解できなかったりして困っていました。事務の女性社員たちとの人間関係についても、戸惑いを感じていたようです。 女性社員たちの年齢はバラバラでしたが、会社の規模が小さいこともあり、ランチはもちろん、ときには休日も一緒に過ごしたりするほど、近い人間関係だったそうです。 Iさんは、仕事を教えてもらう手前もあり、できる限り女性グループと行動をともにしていました。しかし、女性グループで共通の話題となるNetflixの番組も、社内のうわさ話も、Iさんはまったく興味が持てず、そのことが時折態度や言動に出てしまっていたようです。 Iさんは、早く本来のSEの仕事をしたいと思って、1人の時間をつくるようにし、仕事に役立ちそうな仕様書などを読み込んだりしていました。 そのような彼女の行動が他の女性社員の反感を買ったのか、「基本的な事務作業もできないくせに」などと言われているようでした。次第にIさんは女性グループから外され、事務作業について聞ける人もいなくなり、以前に増して失敗が続くこととなります。 ついには自分に自信をなくしてしまい、気持ちが沈み出社できない日も増えてきたので、心療内科を受診しました。その結果、軽い抑うつ状態になっており、背景にASDの傾向がある(グレーゾーン)ことが分かったそうです。