「香りがない花」からバラと同じ“甘い香り”の成分を発見 冠婚葬祭で需要高いトルコギキョウ 市場どう開拓?
冠婚葬祭 業務用で需要高く
長野県がトップ産地のトルコギキョウの魅力アップに向け、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構、茨城県つくば市)が香りの成分を解析した。香りがない花とされてきたが、微弱ながらも甘い香りを放つ品種を調べたところ、バラなどに含まれる化合物「オイゲノール」を検出。農研機構は、オイゲノールを多く含む品種を開発すれば、新たな魅力を持つ切り花になる可能性があるとする。 【グラフ】長野県内のトルコギキョウの栽培面積と出荷量
農研機構などによると、トルコギキョウは多様な花の色や形、日持ちの良さを特長とする国内の主要な花き。結婚式や葬儀などを軸に幅広い場面で使われ、日本の種苗会社が育成した品種が世界市場を席巻している。農林水産省の統計では、国内の出荷量は2022年が8450万本。長野県産はこのうち1320万本で、都道府県別で最も多い。
品種開発で新たな魅力 可能性
一方、香りは顔を近づけて感じられるか否か―といった程度でごく弱く、大半の品種は「香りがない」とされてきた。だが消費者にとって、香りは花を選ぶ際の大きな基準の一つ。農研機構の大久保直美・研究推進室長は「香りがあればより販路が広がる可能性がある」と考えたという。
3年ほど前から研究し、数百種類に上るトルコギキョウの品種から比較的甘い香りがする「ニューリネーションホワイト」の成分を解析。36種類の化合物が検出され、その中で甘い香りはオイゲノールによるものと突き止めた。
大久保さんは今後、ニューリネーションホワイトを品種開発に生かすなどして「もっと強く香るトルコギキョウが生まれる可能性がある」とする。実現すれば、「バラの代わりにプレゼントに使われるなど贈答用のニーズが広がる」と見通した。
プロポーズや結婚記念日… 個人消費の新たなニーズに期待
トルコギキョウは、これまで香りが邪魔をしないこともあって結婚式や葬式など業務用の需要が高かった。市場関係者からは、強い香りの品種は個人消費者に新たにアピールできるとの声が聞かれる。
切り花のトルコギキョウ栽培は1950(昭和25)年ごろ、全国に先駆けて長野県千曲市の力石地区で始まったとされる。元は一重咲きの紫色の花だったが、全国の育種家の手で多様な形や色の花が生まれた。最近は八重咲きが主流で、花びらの縁がぎざぎざな「フリンジ咲き」の品種もある。