【大学受験の仕組み】「困難を抱える人を支援する」社会福祉学部、人気の理由は? 国家資格取得サポートも
高齢化社会が進む中で、需要が増しているのが社会福祉に関わる仕事です。社会福祉学部では、身体的・精神的に困難を抱えている人や、社会的に弱い立場にいる人などに対して、支援するための考え方や方法などについて学ぶことができます。 【データ】福祉学部を卒業 どこに就職?
4年制大学で日本で最初に社会福祉学部を開設したのは、日本福祉大学です。社会福祉学部4年の岸歩果さんは、社会福祉学部があるさまざまな大学のオープンキャンパスに参加する中、日本福祉大学は社会福祉士の合格実績が高いことや、「医療専修」「行政専修」「子ども専修」「人間福祉専修」の4つの専修があり、より専門に特化した知識が得られることなどに魅力を感じたと言います。医療ソーシャルワーカーを目指していた岸さんは、病気を抱える人を支援するための知識や技術を修得できる医療専修を選択しました。 医療ソーシャルワーカーとは、医療機関において患者やその家族が抱える経済的・心理的・社会的問題を解決したり調整したりするのを援助する仕事です。医療ソーシャルワーカーになるには、社会福祉士や精神保健福祉士という国家資格を取得するのが一般的です。 岸さんは次のように話します。 「私が小学5年生のときに祖母の在宅介護が始まり、約4年間、母はほとんど一人で介護と子育て、家事をこなしていました。祖母は24時間ずっと目を離せない状態だったので、母は私に『おばあちゃんのお世話ばかりでごめんね』と謝るのです。でも、一番つらいのは母なので、そう思わせてしまうことを申し訳なく感じていました。母の姿を見て、子どもながらに、患者だけではなく、その家族を支えられるような職業に就きたいと思いました」 岸さんも祖母が通う病院に付き添う中で、医療ソーシャルワーカーと出会い、介護とは違う支援の方法があることを知り、興味を持ちました。
実習はどこで?
岸さんの場合、コロナ禍によって2年次まではオンラインの授業が中心でした。日本や世界の福祉の現状や、医療福祉、精神保健学など、福祉全般を学んだほか、3年次から始まる実習に向けて患者とのコミュニケーション方法などを学びました。 「印象に残っているのが、自分が医療ソーシャルワーカー役、ほかの学生が患者役になって、コミュニケーションを取りながら支援計画を立てていく演習です。最初は患者役の学生に矢継ぎ早に質問してしまっていたのですが、先生から『相手の言葉を一度受け入れることが大事』などと、細かいコミュニケーションの技術について教えてもらいました。おかげで実習先でも緊張せずに患者さんと接することができました」 社会福祉学部で扱うのは児童福祉、高齢者福祉、障がい者福祉、地域福祉などがあり、心理学、保健学、医学、社会学、教育学、経済学、法学といった学問とも深く関わります。一般的に4年制大学の社会福祉学部では、1、2年次にこうした学問を座学で学び、3、4年次に高齢者施設や障がい者施設、児童養護施設などの福祉機関や福祉施設に実習に行き、学びを深めます。 岸さんは3年次には社会福祉士の実習のために特別養護老人ホームへ約1カ月、4年次は精神保健福祉士の実習のために精神科の専門病院と就労支援施設へ約2週間ずつ通いました。 「3年次の実習に行く前は1カ月間は長いなと思っていましたが、実際に参加したら施設には多職種の方がいますし、毎日学ぶことが多く、あっという間でした。特に大きな学びを経験できたのが病院実習です。私は患者さんの症状ばかりに目を向けていましたが、実習指導者の方から『患者さんにはこれまで生きてきた背景があって、価値観はそれぞれ違う』と指摘され、はっとしました。実習の最後には患者さんから『岸さんがいると話しかけたくなる』など、うれしい言葉をいただきました。実習中は何度も心が折れそうになりましたが、一生懸命に働く職員さんたちの姿を見て、改めて医療ソーシャルワーカーは自分が進むべき道だと確信することができました」 岸さんは卒業後、総合病院の医療ソーシャルワーカーとして勤務することが決まっています。 「就職活動で一番大変だったのは、数多くある病院の中でどこを志望先として選ぶかということでした。日本福祉大学には医療ソーシャルワーカーとして現場を経験されている先生がいますし、病院に就職している先輩も多いので、そうした方々の意見を参考に決めました」 現在は2024年2月に実施される社会福祉士と精神保健福祉士の試験に向けて勉強中です。 「キャンパスの中で私のお気に入りの場所が、図書館の2階にある学習スペースです。授業がない日もそこに行って、試験勉強をしています。周りの4年生の多くが国家資格に向けて勉強しているので、自分も頑張ろうと気が引き締まります」