とぅるん。冬に「水ようかん」を食べるのって変わってますか?
「水ようかん」6種類を食べ比べ
なかでも最も有名なのが「えがわの水羊かん」(福井市)だろう。福井の人に「えがわの~」と水を向ければ、確実に「水ようかん」という返しがあるくらい定着している。その「えがわの水羊かん」を食べてみると、寒天のつるんとした感覚とともに、こしあんの程よい甘さと黒糖の香りが鼻に抜ける。この黒糖の個性の強さは、ほかにない。同じ黒糖を使った水ようかんでも、阿んま屋(越前町)の「丁稚ようかん」は、砂糖と合わせて作られているためか、その風味は控えめ。久保田(福井市)の「水羊かん」も黒糖を使っているが、隠し味的でまろやかな印象だ。 菊水堂(若狭町)の水ようかんは、「でっちようかん」と銘打たれている。名水百選にも選ばれた「瓜割の名水」で仕上げている。小豆と上白糖の甘さは、黒糖を使った水ようかんに比べるとすっきりしている。口どけもよく、練りようかんに通じる少しねっとりとしたざらついた舌触りがある。同じ若狭の伊勢屋(小浜市)の「丁稚ようかん」も菊水堂と似た舌触りで、ちょっと食べごたえのある感じがする。東京で食べる水ようかんに近いのが、金進堂(越前市)の「水羊かん」だろう。小豆と三温糖で作らていて、優しい甘さ。全体的にクセがなく、軽い。
どうして冬に食べるようになったのか?
どれも少しずつ味が違って、自分好みの水ようかんを1つずつ選んでいくのはきっと楽しい。でも、水ようかんを一切れ口に運ぶたびに「どうして冬に食べるようになったのだろう?」という疑問が頭から離れない。結論からいうと、その由来には諸説あって、本当のところは分からない。 京都に奉公に出た丁稚(でっち)が、正月に里帰りする際に土産として持ち帰ったからだという説がある。実際、京都府丹後や滋賀県信楽などでも冬に羊かんを食べる習慣があって、飯田さんは「丁稚奉公文化の名残りに大きく関わっているかもしれません」と言う。それが理由だからか分からないが、同じ福井でも京都に近い若狭では、確かに冬の「水ようかん」を「丁稚ようかん」と呼ぶことが多い。