とぅるん。冬に「水ようかん」を食べるのって変わってますか?
しかし、なぜ丁稚の土産が「練りようかん」ではなく、「水ようかん」なのかという疑問もわいてくる。高級だった小豆や砂糖を少しでも節約して丁稚に持たせたという、もっともらしい説のほか、丁稚が作ったら水っぽくなっただとか、丁稚でも作れるからだとかいう怪しい説もあって、こちらも諸説あってよく分からない。 習慣というのは、起源が分からないことが多い。そういうものだろう。ただ、間違いなく言えるのは、練りようかんとは違って、暖かい部屋で冷たい水ようかんを食べると、喉元がひんやりとし、ほてった体に気持ちが良いということだ。
パッケージに歴史あり
福井県内では、11月に入ると翌年の3月まで、スーパーはもちろん、コンビニの店頭にも水ようかんが並ぶようになる。なぜだか焼肉屋にも置いてあることがあるらしい。持ち帰りデザートのようなものだろうか? 焼肉屋はともかく、昭和30年ころ、水ようかんは、町の八百屋や駄菓子屋の軒先で売られていた。「一本流し」と呼ばれる漆の木箱で固められた水ようかんを、1枚、1列をすくっていくらといった具合に売られていたのだという。冷蔵庫がなかった昔は、廊下や納屋に置いて冷やしていたらしい。
水ようかんの箱を眺めながら気づいたのは、昔とパッケージが違っていたことだ。少なくとも20年前の昔には、蝋引きの紙箱にようかんが直接流し込まれていた。しかし、店頭で食べている水ようかんは、そうではなくて、脱酸素剤とともにプラスチックのケースに入れられ、シールで密封されている。なんだか現代風で味気がないような気もする。 飯田さん曰く「2013年からです。趣的には”昔感”が薄れてしまいますが、3~4日しか持たなかった賞味期限が10日~2週間に伸びました。扱いやすさからお土産需要やまとめ買いにつながっています」。 水ようかんは糖分が低いのに加え、防腐剤などが無添加なので、長く日持ちしない。郷土食として、県内で食べるにはいいけれど、遠方に輸送し、おいしく食べてもらうには、こうしたパッケージングに工夫が必要ということらしい。それで地方の良さが東京に伝わるのであれば、それだけの価値があるというものだ。
福井の冬は厳しいが、凛とした空気とすがすがしい自然の美しさは、何ものにも代えがたい。ふと窓の外に目をやると山や木々は白く化粧し、田んぼや道路には雪が深く降り積もっていて、家の暖かさをありがたく感じる。 暖房のきいた部屋でアイスクリームを食べるのも捨てがたいけれど、水ようかんを食べながら、日本の風土や文化に思いを馳せてみるのも、これまた冬の過ごし方なのだと思う。 取材協力:福井県ゆかりの店 in 東京 ---------- 店名:食の國 福井館 住所:東京都中央区銀座1-3-3 電話:03-5524-0291 定休日:無休(12月31日と1月1日の年末年始を除く)