新しい文化のつくりかた:異彩作家とヘラルボニーの挑戦
「100年先の文化をつくる」ヘラルボニーの挑戦
■「100年先の文化をつくる」ヘラルボニーの挑戦 才能ある「異彩作家」を発掘し、正当に評価される社会を実現する。そのために100年企業を目指す彼らの3つの基軸とは。 1. “稼げる”仕組みの創造 障害のある人を支援する事業所などで得られる平均賃金は月額1万5000円程度といわれる。へラルボニーは作品そのものを売買する画廊ビジネスではなく、作品をIPライセンシング化。大手企業との協業や商品を展開し、作家に還元する。親の扶養を超え確定申告した人も。 2. レペゼン岩手 松田兄弟の出身地である岩手県は、世界へと踏み出した今もヘラルボニーの哲学を支える場所だ。本社やギャラリーを置き、ビジネスを共にする人たちには必ず訪れてもらう。「るんびにい美術館」は崇弥が起業を決意するきっかけの地だ。岩手から世界に発信することに意味がある。 3. 常識を変える仲間づくり 2020年、「この国のいちばんの障害は、『障害者』という言葉だ。」というコピーの意見広告を霞が関に掲出。以来、社会や常識を変えるアクションを続け、共感の輪を広げてきた。この7月にはフランス拠点を設立。こうした哲学と事業を通じた仲間づくりを海外にも拡大させていく。 ■世界中の新たな人たちを巻き込む、ヘラルボニーという可能性 「HERALBONY Art Prize 2024」審査員として来日中だったアール・ブリュットの世界的権威に、ヘラルボニーが秘める可能性について話を聞いた。 障害のある作家をメインのアートシーンに連れていくには、ギャラリストとして彼らの作品を有名な美術館に売り込むしかないと考えていました。ただ、美術館やギャラリーは権威的な印象があり、必ずしもみんなに近しいものではありません。ヘラルボニーは、まったく違うやり方でアール・ブリュットの作品を多くの人に届けようとしている。最初に話を聞いたとき、こんなやり方があるのかと、私自身学びになりました。 「ヘラルボニー」という言葉自体には明確な定義がないことも興味を引かれました。定義がないということは、新たな人を巻き込む余地があるということ。新たな旅路の始まりを感じます。 ただ、素晴らしいからこそ、日本語だけではもったいない、英語や中国語でも発信すべきだと言いました。私は20年前にギャラリーを立ち上げて、各国を旅しながら世界中のアール・ブリュット作家たちを発掘しました。日本以外にも素晴らしい作家は大勢います。松田さんたちが今回世界中のアーティストとアクセスする国際アワードを立ち上げたのは、実に素晴らしいアイデアでした。ヘラルボニーのビジネスモデルは世界で通用すると確信しています。 松田崇弥◎へラルボニー代表取締役Co-CEO。クリエイティブを統括する双子の弟。小山薫堂が率いる企画会社オレンジ・アンド・パートナーズのプランナーを経て独立。文登と共にヘラルボニーを設立した。 松田文登◎ヘラルボニー代表取締役Co-CEO。営業を統括する双子の兄。岩手のゼネコン会社で被災地の再建に従事したのち、崇弥と共にヘラルボニーを立ち上げる。現在も岩手県を拠点とする。
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