農業ベンチャー社長が語る「農家はやめとけ」とみんなが言う本当の理由
小竹:お友達の畑を手伝ったり? 西辻:そうです。田植えの手伝いとかしました。ただ、母親が「家庭菜園をしようよ」って言って、社宅の裏庭に小さな畑を設けてくれたんです。そこで母親と家庭菜園をしたのが、自分にとっての最初の畑との接点です。 小竹:そのときは何を作ったのですか? 西辻:大根とかじゃがいもとか簡単に作れるものを作っていた印象がありますが、4~5歳でほぼ自分の力だけで野菜を作るというのは、我ながらすごいのではないかと思っています(笑)。 小竹:周りに教えてもらって作っていたのですか? 西辻:母親に聞いたところ、とにかくずっと畑にいて野菜を収穫していたそうで、「ほとんど手伝っていない」って言われたんです。それで「僕はできるんだ」という自尊心が生まれるという幼少期でしたね。 小竹:すごいですね。 西辻:家庭菜園をする方から「どうしたら野菜をうまく作れますか?」とよく聞かれるのですが、「野菜に向き合うことですよ」といつも答えます。「肥料をあげましょう」とか「草取りをしましょう」とかそんな話ではなく、畑にいて少し変わったというアクションが分かれば、こっちがリアクションで何かできる。野菜と僕との関係が密接であれば野菜はちゃんとできる。いつもそうアドバイスしています。 小竹:誰からも教えてもらっていないけど、ちょっと葉っぱが元気がないからお水あげようみたいな? 西辻:そういうことです。虫が来たからペッペッてするとかですね。 小竹:4歳ですごいですね。記憶はありますか? 西辻:母親に収穫したものを持って行って、大根の葉っぱを味噌汁に入れてもらって、大根を角煮にしてもらって喜んでいたのを覚えています。 小竹:そもそものきっかけは、周りのお友達が農業をしていることへの憧れでしたが、野菜に向き合い始めてみたら実はそっちだった? 西辻:そうですね。何かに熱中するとどんどん突き詰めたくなるので、それがたまたま野菜だったのかもしれないです。 小竹:ほかには、どんな野菜を作っていたのですか? 西辻:印象的なのは、小学生のときに栽培したじゃがいもです。じゃがいもは放っておいてもできるって昔の人や親から言われるんです。でも、放っておくと小さいのしかできません。だから、ここは放っておく場所、ここは土を耕す場所とかって分けて、いろいろとやってみたら、全然大きさも違うし、味も違う。そこに面白さを覚えたのが小学生時代です。 小竹:じゃあ家庭菜園でする野菜は、小学校の時には大体作った? 西辻:そうですね。親と一緒にホームセンターに野菜の種や苗を買いに行くのがすごく好きで。ほとんどの野菜はそこで作りましたね。 小竹:私も子どもに野菜を作らせていますが、できたものを料理するとすごく喜んでくれる。野菜作りは親子関係にもすごくいいですよね? 西辻:おっしゃる通りです!僕は反抗期もなく母親と仲良くやっていますが、それは小さい頃のお料理経験があるからかなって思います。 小竹:小学校から中学校、高校になっても野菜への情熱は失われず、むしろ高まった感じですか? 西辻:僕は植物がすごく好きで、福井県には植物採集という夏休みの自由研究があるのですが、そういったものとか、どこかのコンテストに研究結果を出すことが結構あったのですが、ほとんど総なめにしたことがあります。覚えている限りで6個くらい賞を獲ったと思います。 小竹:中学校や高校に行っても、賞を獲ったことから学問も深くいこうみたいな感じになっていくのですか? 西辻:僕はちょっと変わっていて、植物の品種や生育への興味よりも、どう楽しく畑と向き合えるのかということを考えていたので、家庭菜園を円形の畑にしてみたり、スイカをちょっと支柱を仕立てて、上で作ってみたりとか、楽しめるようなコンテンツを自分で作りたいと思っていましたね。 小竹:どこに楽しさを感じたのですか? 西辻:あえて子どもっぽく言うと、「答えてくれている」といううれしさがありますよね。 小竹:野菜が育っていったり、変化が起こったりというところですかね? 西辻:「たまごっち」が出たときに、野菜を育てたほうが面白いやんと思ったし、向き合うと答えてくれて嬉しいみたいな育てる楽しみを感じていました。