【図形問題】長方形ABCDの辺AB、CDに逆向きの矢印を付けました。矢印の向きをそろえて「同一視」するとできる図形は?ただし新図形は自己接触しません!
線分と線分の同一視
「線分と線分を同一視する」ことも「点と点を同一視すること」から類推できるでしょう。この場合は、線分と線分をぴったりあわせて1本の線分にします。 片方の線分のある点は別の線分のある点と同一視されます。 ある図形から、同一視によって「新図形が自己接触しないように」構築するのは数学では基本操作です。この後でも、上のような問いを出していきます。
正方形を操作してできる図形は?
それでは、曲面の話を始めます。 正方形ABCDを用意します。この正方形は辺だけなく中身もあります。次に、正方形の4つの辺に矢印を付けます(図4左)。ここでは問題文とは違い、向かい合う辺の矢印の向きが合うようにしてください。 この図形の、辺BAと辺CDを同一視します。矢印の向きが合うようにします。辺ADと辺BCを同一視します。ここでも矢印の向きが合うようにします。 これらの同一視をして新図形を自己接触しないように作ります。さて、どんな図形ができるでしょうか。 順に見ていきます。まず、この正方形の辺ABと辺DCを矢印の向きが合うように、ぴったり貼り合わせてみましょう。当然、点Aと点Dが重なり合い、点Bと点Cが重なり合います。これは筒のような形になります(図4右)。 では続けて、辺ADと辺BCを矢印の向きが合うように貼り合わせてみましょう。できる新図形は自己接触していないようにします。
このドーナツ図形の名前は「トーラス」!
貼るときに正方形ABCDを引き延ばしたり曲げたりしてもかまいません。アタマを柔らかくして考えてください。 答えは、ドーナツの表面のようになり、結果として4つの点A、B、C、Dは重なり合って1点になります(図5)。 この図形には「トーラス」という名前が付いています。 それでは、これから少しずつ複雑な図形を考えてみましょう。
長方形ABCDを操作してみると
次も、紙工作の問題です。 まず長方形ABCDを用意します。まわりの辺だけでなく中身もあります。横の長さを、縦の長さより、結構長めにしておきます。 この長方形の辺ABと辺DCに同じ向き(図では上向き)の矢印を付けます。この矢印の向きが合うように同一視します。このとき、新図形は自己接触しないようにします。これは、どのような図形になるでしょうか? もうおわかりだと思います。さきほどと同様に、点Aと点D 、点Bと点Cが重なり筒のような形ができます(図1.13)。 この図6の右の図形はアニュラス、シリンダー、筒、円柱の側面、などと呼ばれますが、ここではトポロジーでよく使われる「アニュラス」と呼ぶことにします。このアニュラスを曲げたり、引き延ばしたりしてできた図形もアニュラスと呼ばれます(図7)。 あれ! と思った方もいらっしゃると思います。さきほどのトーラスを作るときにもアニュラスが出てきていました。