前期比40~50%増の売上高を維持する秘訣とは? カンロの自社EC管掌・武井デジタルマーケティングチームリーダーに聞く
アメやグミなどを製造販売している菓子メーカーであるカンロの武井優氏(マーケティング本部 デジタルマーケティングチームリーダー)は、自社ECサイト「Kanro POCKeT(カンロポケット)」の運営を管掌し、コロナ禍を契機とした自社ECの販路強化に成功している。武井氏に、前期比40~50%増で推移してきたメーカーD2Cならではの取り組みや工夫を聞いた。
EC売上40~50%増に成功したサイト改善&商品開発
■ コロナ禍でEC販路に注力 ――自社EC事業の変遷と、「Kanro POCKeT」の特長を教えてほしい。 カンロ 武井氏(以下、武井氏):カンロの販売チャネルは従前、卸売りと直営店だった。コロナ禍で直営店の休業などにより客足が落ち込んだとき、ECの需要・利用が高まり、ECチャネルを開設し、大きく成長した。
私自身、育休から復帰してすぐにデジタルマーケティングのプロジェクトリーダーに任命された。2021年度~2023年度のEC売上の伸長率は前年比40~50%増で推移。2024年度も堅調に伸びている。
EC売上高は、直営店を展開している「ヒトツブカンロ」商品の構成比が高くなっている。
ECのGMV(流通総額)が急成長している要因は、「ヒトツブカンロ」と連動して単価1万円ほどのシーズンギフトをECで専売し、ヒットにつながったことが大きい。2024年夏は8000円、1万円(いずれも税込)の2パターンのギフトセットを数量限定で用意したが、どちらも好評で、発売後30分以内に完売した。
――自身の役割、担当業務を教えてほしい。 武井氏:EC業務全般を管掌しており、D2Cのメーカー直販ECをリードしてきた。いわゆる売上管理、顧客コミュニケーションの整備、チャットボットやAIを使ったEC機能の開発、顧客行動の分析、SNS運用、会員アンケートを用いた顧客の声のヒアリングなどだ。 デジタルマーケティングチームの発足当初、推進するべきプロジェクトとしてコンタクトセンターの整備が真っ先に上がっていた。FAQ(よくある質問)の充実や、チャットボットを利用して整備してきた。 ――近年の自社ECを振り返って、変化を教えてほしい。 武井氏:コロナ禍前から現在までを振り返ると、社内でDX化が大きく進んだ。ユーザーからの問い合わせはチャットボットがかなり増えた。電話は高齢の方が多いが、若年層からの問い合わせ件数の増加がチャットボット利用増加につながっている。 顧客からの問い合わせや動向をもとに、カスタマーセンターから社内へのフィードバックも行っている。フィードバックを踏まえて、たとえば、顧客がより問い合わせしやすいサイトUI・UXの改善に生かしている。 ■ 「体験価値」を売りにした高単価商品に挑戦 ――EC事業における自身のチャレンジを教えてほしい。 武井氏:単なるアメやグミではなく「体験価値そのものを売る」という商品開発・販売にチャレンジしている。 自分は2023年まで、ECの商品開発に携わる部署と、マーケティング、機能開発の部署を兼任していた。「すでに一般流通している商品はECで売りにくい」という課題があったので、EC専用の商品が必要だと思っていた。 単価の低いアメやグミを主力商品としてECで販売することは、一般的には粗利の確保に追われ、大幅な利益アップは難しい。 しかし、そういった既存概念に捉われないチャレンジがECチャネルだからこそできるのではないかと考えた。たとえば、アメやグミに食品以上の価値を上乗せして販売することで、販売価格を従来品よりも引き上げることができる。 税込2000円、内容量100グラムから販売している「ホシフリラムネBOXセット」は、その取り組みの1つ。ラムネとしてはチャレンジングな値付けをした。ラムネをパウチに入れて届け、同梱の瓶に顧客が入れる。ラムネを星に見立て、夜空を彷彿とさせるようなデザインの瓶のなかに「星が降る」ようなイメージを押し出してブランディングしている。