誰かのハッピーエンドの裏にある悲しみ…スポットライトが当たらない“裏側”を描いた漫画が切ない【作者に聞く】
漫画やドラマには必ず終わりがある。そして、さまざまな苦しみや悲しみを乗り越えたエンディングには、当然のように成功や幸せが用意されている。本作の主人公は、恋愛ドラマを見終わって「最終回というのは、どうしてこんなにも陳腐なのだろう」と考えていた。 【漫画】本作「ハッピーエンド」や雪宮ありさ代表作の「最果てのともだち」を読む 「主役にだけ都合のいいハッピーエンドなんて大嫌いだ」と暗い部屋で思い巡らす主人公のもとに、ある人物からのメッセージがSNS上に流れてきた。「【ご報告】私事ではございますが…」から始まるその内容を目にした彼女は一瞬固まり、悲しげに微笑んだ。その直後、彼女の目からは大粒の涙が…!彼女の元に届いた「ご報告」とは?著者・雪宮ありさ(@yukimiya_7sb)さんに本作の「ハッピーエンド」について話を聞いてみた。 ――「ハッピーエンド」を題材に描かれた理由は?作品に込めた想いを教えてください。 随分前になるのですが、私が長年追ってきた好きな作品が完結を迎えた際に「ハッピーエンド」の構想が生まれました。その作品はとてもきれいな終わり方をして感動したのですが、同時にとてつもなく寂しくなってしまいまして…。そのとき、自分と同じ気持ちになった人はいないかなと当時のTwitterで感想を検索したら、同じような気持ちになっていた人を何人か見つけました。 その中で「キャラクターたちの成長や幸せを見届けて、自分ひとりどうにもならない現実に置いてけぼりにされたようで寂しい気持ちになるから最終回なんて嫌いだ」みたいな投稿が目に入ってきて、その言葉が忘れられなくて…。このどうしようもない気持ちをうまく消化させたくて漫画にしました。 ――作中でも「主役にだけ都合のいいハッピーエンドなんて大嫌いだ」というセリフが出てきますね。 恋愛をしているときや夢を追ってる最中は、人生において自分が主人公になっている実感みたいなものがあると思うのですが、いざそれらがうまくいかなかったとき「ああ、自分は主人公じゃなかったんだな」って思い知らされるときがあって、その瞬間を描きたいと思いました。 恋愛漫画では基本的に「主人公と恋人の間にどんなトラブルが起ころうと2人は乗り越えてうまくいく」という話が大半なので、ヒロインになれなかった側を主体に描いてみるのもこういう創作短編ならではといった感じで、描いていて新鮮でしたし楽しかったです。 ――「ご報告」のメッセージを読んだ女の子の悲しげな微笑みが印象的でした! 本当につらいときこそ悲しい顔じゃなくて笑っている顔の方が、より切なくより悲しく見えると個人的に思っています。このシーンでは主人公の目元は今にも泣きそうだけど口元は微笑んでいる…という表情にしました。 ――現在、新しい連載作品に取り組んでいらっしゃるとのことですが…? はい。現段階ではどうなるかハッキリと確定していないのですが、新連載の準備をしております。前連載作品や創作で描いてる漫画は基本的に切ない話が多いのですが、最近は読んでいてホッと癒やされるような漫画を描きたいと思っています。ちゃんと形にして早くお届けできるよう、着実に頑張っていきます。いつお届けできるかは未定ですが、気長に温かく見守っていただければ幸いです…! 雪宮ありささんは、2014年に第24回スクウェア・エニックスマンガ大賞で「人魚の星」が入選、「月刊少年ガンガン(スクウェア・エニックス)」で商業誌デビューした。その後も順調に「月刊少年エース(KADOKAWA)」や「まんがタイムきららフォワード(芳文社)」などで読み切り作品を掲載。2021年からは「まんがタイムきららフォワード(芳文社)」で自身初の連載作品「最果てのともだち」がスタートすると、好評を博し単行本が全3巻(完結)発行されるまでに!これまで雪宮さんの作品を読んだことがない人は、この機会に本作や代表作「最果てのともだち」を読んでみてはいかがだろうか? 取材協力:雪宮ありさ(@yukimiya_7sb)