数字が苦手なビジネスマンでもよくわかる!…「会社の経営成績」が読み解ける「貸借対照表」の超キホン【公認会計士が解説】
株主が出した資産=「純資産」
先生:一方、自分で出したお金が純資産です。自分というのは、会社の場合、そのオーナーである株主です。つまり、株主から出してもらっているお金ということです。資本金と利益剰余金があります。利益剰余金というのは、これまでの利益のうち社内に留保し、蓄積しているお金です。 生徒:利益剰余金は、会社で蓄積してきたお金なのに、なぜ集めたお金だと考えるのですか? 先生:これまで稼いだお金は今すぐに株主に分配すべきですが、お支払いせず手元に残しているお金だからです。株主からお金を出してもらっているといえる状態です。 生徒:わかりました!
左側を見れば、お金の使い道が分かる
先生:次に左側を見ていきましょう。お金を何に使っているのかがわかります。これを「運用形態」といいます。現金預金、売掛金、有価証券、棚卸資産、土地・建物、機械・設備などがあります。売掛金とは、商品・サービスを売ったあと、一定期間後に支払われることが約束された権利のことをいいます。これは、儲けを稼いだけれども、まだ手元に入ってきていない状態のお金です。 生徒:なるほど…。 先生:棚卸資産とは、販売前の商品、製品、原材料、仕掛品です。これは、お金を使ったけれども、まだ儲けを稼ぐために使われていない状態のお金です。 生徒:そのような区分けがされているのですね。 先生:資産も短期と長期に分けられます。短期の資産である流動資産は、お金そのものである現金・預金は当然のことですが、それ以外にも、すぐにお金を稼ぐために使われるもの、近いうちにお金が入ってくるものがあります。長期の資産である固定資産は、すぐにお金を稼ぐためには使われないものがあります。土地・建物は固定資産です。土地は使っても減らないですし、建物は長期間にわたって使い続けられるものです。
左右に並べることで、お金の調達と運用を両面から把握!
生徒:個別の資産や負債について理解することができました。でも、それが決算書の左右に並んでいる意味がよくわかりません。 先生:それでは、会社が設立されるスタート時からお金の動きを追ってみましょう。会社を始める前は、会社にはお金はありませんよね。資産はゼロ、負債もゼロ、そして純資産もゼロです。 生徒:はい。わかります。 先生:オーナーである株主が100万円を出資すれば、会社に100万円のお金が入ってきます。そうすると、資産である現金が100万円、純資産である資本金が100万円となります。貸借対照表の左右に100万円ずつ計上されるわけです。 生徒:なるほど。左右が一致するわけですね。 先生:次に、銀行から100万円借りることとしましょう。会社のお金は200万円に増える一方で、負債100万円、純資産100万円となります。 生徒:はい。わかります。 先生:さらに、100万円かけて工場を建築することとしましょう。会社のお金のうち100万円が工場の建築に使われます。これによって、資産は、現金100万円と建物100万円になります。 生徒:なるほど、常に左右の金額は一致しているということですね。 先生:そうですね。左右バランスする決算書ということで、バランス・シートと呼ばれます。これによって、すべてのお金を調達と運用の両面から捉えることができるのです。 生徒:建物100万円という資産は、100万円の価値がある工場を持っているという意味ですね? 先生:そのように見えますが、実は意味が違うのです。建物100万円という資産は、工場を建築するために100万円というお金を使ったという意味なのです。工場を使って商品を販売しようとしているのです。稼いだお金が、使ったお金の100万円よりも多ければ、利益が出たと考えるのです。 生徒:なるほど。稼いだお金と使ったお金の差額が利益なのですね。よくわかりました! 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
岸田 康雄