「顔を殴られて失神、歯が2本折れた」父の暴力に耐えかねて17歳で家出した女性が、“生きる選択”をするまで
若者の「見えない貧困」が広がっている。旧来型のネカフェを根城にするケースだけでなく、「限界シェアハウス」が増えたことで路上生活をせずともその日暮らしを続けていけるからだ。 人手不足で就職市場は空前の売り手市場と言われているが、若い人材が引手数多な一方で、貧困から抜け出せない若者も多い。そして、彼らの多くは“親ガチャ”を理由に世代を超えた負の連鎖を断ち切れずにいる……。そんな過酷な環境で暮らす若者を徹底取材。「忘れ去られた若者たち」にスポットを当てる。 ⇒【写真】25歳になった今も、高校の体育の授業で使っていた「つま先がはがれたシューズ」を履いている
父の暴力に耐えかねて17歳で家出
小松由佳さん(仮名・25歳) 【現在の状況】シェアハウス生活 【主な収入源】派遣清掃員 【現在の月収】約10万円 今年5月、ホームレス生活をしていた大阪から上京してきた小松由佳さん(仮名・25歳)。彼女も3歳の頃に両親が離婚しているが、父親との2人暮らしが始まったのを機に貧困家庭に陥った。 「大工だった父親は典型的な亭主関白気質で、家事は女である私がすべてやらされました。食費は不定期に1000円を渡されるのでレトルト食品が中心。女性関係も奔放で、あるとき家に帰ったら、父が同級生の母親と布団で寝ていたこともありました」 その後、小松さんは定時制高校に進学。うつ病になりながらも、ヤングケアラーさながらに父親の面倒を見ていたが、17歳のときに家出を決意する。きっかけは、父親からの激しい暴力だった。 「掃除や洗濯物の畳み方が雑だと、罵倒されて髪の毛を摑んで引きずり回すんです。その日は顔を拳で殴られて失神……。気がついたら歯が2本も折れていた。警察や児童相談所にも相談しましたが父親が『躾の一環』と主張し保護されず、『このままだと殺される』と思って夜逃げしました」
パートナーへの依存が生んだ「新たな悲劇」
逃がれた先は、大阪の難波。メイド喫茶を経営する知り合いのオーナー宅だった。 「そこには、私と同じような女性が5人ほど暮らしていました。キャストとして働き始め、休みは月1日のみ。17万円の給料から月4万円が寮費として天引きされていました。今、思えば、うつ病を抱えながらのブラックな環境でしたが、当時はほかに父親から身を隠せる場所もなかった」 20歳のときメイド喫茶を退店。割のいい居酒屋やガールズバーを転々とし、店で知り合った男性と交際することもあったが、パートナーへの依存が新たな悲劇を生むことに。 「嫌われたくない一心で相手に尽くしちゃうんです。当時借金を抱えていた彼を助けたい思いで連帯保証人になるとすぐに違う女のところに……。残ったのは80万円超の借金だけでした」