カブトムシが世界のゴミ&食料問題を解決!? ''好き''の追求は必ず誰かの役に立つ #豊かな未来を創る人
カブトムシがゴミを資源に変える
── カブトムシといえば、今も昔も観賞用として人気の高い昆虫です。そんなカブトムシが、ゴミ問題や食料問題につながるビジネスとは? 改めて教えてください。 陽佑 すごく簡単に言うと、農家などで処分に困っている有機性廃棄物をカブトムシに食べさせる。そうしてたくさん育てたカブトムシを、僕たちが運営するECサイトでペットとして販売するだけでなく、昆虫食や魚・鶏のエサに加工するなど、タンパク質として活用するための研究開発を行っています。 つまり、カブトムシを介することで、ゴミとなるはずだったものを資源に変えて活用できるというわけです。この循環を通して、環境負荷が少ない形でゴミを処理でき、今後世界で不足が危惧されているタンパク質も効率的に生み出すことができるのです。 ── カブトムシに食べさせるゴミというのは、具体的にどんなものでしょうか。 健佑 例えば、きのこの収穫後に出る廃菌床(はいきんしょう)や、ワインの絞りかす、日本酒を作った後の酒粕などですね。通常、これらの有機性廃棄物といわれるゴミは、お金を払って焼却処分する事業者さんが多いのです。 僕たちは、そうした事業者さんから、廃棄物のサンプルをもらい、まずはカブトムシのエサに加工できるか試します。そこで加工できれば、事業者さんにプラントを販売して、交尾後カブトムシのメスの成虫を提供します。そこから僕たちがノウハウをアドバイスしながら、事業者さんに廃棄物の加工からカブトムシの成育までを担ってもらう。そしてカブトムシが育ったら、僕たちがそれを買い取って、販売もしくは加工するといった流れです。 事業者さんにとっては、プラントを建てる初期費用を負担すれば、それまでゴミ処分にかかっていたコストがゼロになる。そして、エサ代などの経費がほとんどかからずに、利益を生み出せる仕組みです。
── 実際、事業者からの反応はどうでしたか。 陽佑 当初250件もの問い合わせをいただきました。現在はその中から条件の合致した事業者さんと一緒に取り組み、全国約40か所のプラントで、年間約6万匹のカブトムシを育てています。それによって処理する年間の有機性廃棄物は、約1,200トンです。 ── ものすごい量......。 健佑 それでも人口増加にともなって、この先も世界の有機性廃棄物は大きく増え続けていくこと、そしてその焼却処分で出るCO2の問題を考えると、まだまだこの事業を地球規模で広げていく必要があると強く感じています。 ── 次に、カブトムシをタンパク質に変えるというのは? 健佑 先ほども言った、人口増加などにともなう食料問題。特にタンパク質は、今後需要に対して供給が追いつかなくなっていくことが、世界全体で喫緊の課題となっています。 これに対して、僕たちは有機性廃棄物をエサにして育てたカブトムシを、タンパク質として活用できると考えています。実際に大手コンビニ企業と共同で、カブトムシを使ったお菓子の開発販売を行いました。さらに今力を入れているのは、カブトムシを魚の養殖や養鶏のエサに加工する取り組み。これは既に大学や大手企業とともに、商用化に向けて確実に進めているところです。 陽佑 それ以外にも、例えばカブトムシが出すフンは、野菜などの肥料にもなる。さらに飼料に加工する段階で出る油には、オメガ3が豊富に含まれているので、今後は創薬の分野でも研究開発を進めていく予定です。こうしてカブトムシがあらゆる分野で活躍するのは、カブトムシ好きにとって、これ以上ないロマンを感じますね。