休日の寝だめは逆効果!「社会的時差ボケ」が不調を招く 今日から睡眠の質を上げるためにできること
理想的な睡眠を実現するための六つのポイント
――どのように工夫すれば理想的な睡眠を実現できるのでしょうか。 寝ている間に自分で睡眠の質を高めることはできないので、眠りに入る前にどう準備するかが大事です。 理想の睡眠を実現するポイントは六つあります。一つは、社会的時差ぼけを解消することです。本当は平日でも眠りたいだけ眠れるといいのですが、現実的には難しいでしょう。そこで気をつけたいのが、睡眠時間帯の中央値をずらさないように眠ることです。休日に2時間多く寝るとしたら、入眠時間を1時間早めて起床時間を1時間遅くする。そうすれば、中央値をずらさずに、休日に睡眠負債を解消できます。ただし、社会的時差ぼけだけ小さければよいという考えではなく、しっかりと睡眠時間を確保した上での話です。最も避けなければならないのは、睡眠時間も短くかつ社会的時差ぼけが大きい状態です。 理想的な睡眠のポイントの二つ目は、朝食を食べることです。朝食を週3回以上食べる人と3回未満の人とを比べると、3回未満の人は不眠のリスクが1.41倍に上がります。よく朝に光を浴びると脳が覚醒すると言われますが、実はこのときはまだ、首から上しか目が覚めていません。臓器などは朝食を食べることで初めて「朝がきた」と認識するのです。これは時計遺伝子の働きによるものです。忙しいと朝食を抜いてしまう人は多いと思いますが、簡単なものでもいいので何かを食べることで臓器の体内時計がリセットされて整います。 三つ目は、完全に部屋を暗くした状態で眠ることです。夜に豆電球をつけた部屋で眠る人がいますが、たとえわずかな光でも目をつむっていたとしても、光は入ってきます。すると、睡眠の質が低下しやすいのです。夜に豆電球をつけて眠る高齢者はそうでない高齢者と比べて、うつ症状になる割合が2倍ほど多いという調査結果もあります。 四つ目は、騒音のある環境を避けることです。眠るときはもちろんですが、日中に騒音がする環境にいると、不眠症のリスクが1.5倍ほど高まります。眠るときは静かな環境だったとしても、同様です。現代社会では騒音を避けることはなかなか難しいことですが、できるだけ騒音がない環境を心掛けることです。 五つ目は、寝る前にネガティブなことを考えないようにすることです。私自身も効果を実感しているのですが、眠る前にその日にあった良いことを三つ思い浮かべるとよいでしょう。ささいなことでかまいません。穏やかな気持ちで眠りにつくと、翌朝起きたときにスッキリしていると感じます。 六つ目は、怒ったまま寝ないことです。怒った状態で寝てしまうと、その時の嫌な記憶が脳に深く刻まれて、その記憶をぬぐい去るのが難しくなります。そんな状態に陥ると睡眠の質も悪く、寝覚めも良くないことは容易に想像がつきます。 ――シフト勤務などにより、時間が不規則になる仕事に従事している人もいます。そのような状況でも望ましい睡眠を実現するためにはどうすればいいのでしょうか。 最近では労働者の疲労回復や健康の維持を目的として、勤務と勤務の間の休息時間を確保する勤務間インターバル制度が企業の努力義務となりました。こうした制度があっても、シフト勤務は生活リズムが一定ではなく、どうしても睡眠の質が低下しやすくなります。 シフト勤務の方が望ましい睡眠を実現するには、不規則な生活リズムの中でも規則性を作るといいでしょう。例えばシフト勤務が3パターンあったとしても、寝る時間と起きる時間をなるべく一定にするように意識してみてください。「シフト勤務は生活が不規則になっても仕方がない」と規則性がない状態を続けていると、睡眠リズムが乱れて、シフト勤務を続けられなくなってしまう可能性もあります。 また、家族と暮らしているなら、シフト勤務の方が寝る時間が他の家族の生活時間帯と重なることもあるでしょう。こうした場合は、落ち着いて眠れる環境を作ることの大切さを、家族に理解してもらうことが大切です。