<21世紀枠候補校企画>地域の支えを力に 茨城・石岡一 センバツ21世紀枠候補
3月23日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が今月25日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難条件克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。 【写真で振り返る歴代出場校】 ◇「地元から甲子園」を目標に 日暮れとともに練習メニューが一通り終わると、関東・東京地区候補校・石岡一の選手たちはベンチに座って、女子マネジャーが4升の米を炊いて用意した1人当たり1合の丼飯をかき込み始めた。卵かけご飯やカレーライスの時もある。パワーの源になる体作りに欠かせない補食だ。 米や具材は主に茨城県石岡市の近隣農家からの差し入れだ。酒井淳志主将(2年)は「みんな差し入れしたり、練習を見に来たりしてくれる。何とか恩返しがしたい」と話す。 部員はマネジャー3人を含めて49人全員が電車で通える範囲に居住する。最速147キロの逸材で昨秋の県大会でチームを4強に導いたエースの岩本大地(2年)は「地元の石岡一に行って、自分の力で甲子園に連れて行きたかった」と入学動機を説明する。地元育ちの選手を見守る地域の人々にとっても、甲子園出場は悲願だ。 1910年創立の農学校が母体。現在も普通科のほか、草花、野菜、果樹を栽培する園芸科や、庭園作りなどを学ぶ造園科がある。川井政平監督(44)は「野球部は約6割が普通科で、約4割が実習の多い園芸科と造園科の生徒。練習や試合に全員そろわないことが多い」と語る。岩本も造園技能検定3級を持つ造園科の生徒だ。 練習時間が限られる分、川井監督が重視するのが、選手の長所を伸ばす指導と、個々の目的意識の可視化だ。例えば素振りやティーバッティングなら、単に数をこなすだけでなく、身につけたいのはスイングの型なのか、ミート力なのか、パワーなのか、一人一人がその日の目的を明確にして、ノートに書くようにしている。 恵まれない環境で練習に励む選手を勇気づけたのが、昨夏の甲子園で準優勝した秋田・金足農だ。岩本は「同じ農業系で強い私立を次々に倒したので、すごいなと思った。吉田輝星投手の動画を見て下半身の使い方を参考にしている」と言う。東北の雄に自らの姿を重ね合わせつつ、着実に歩みを進めている。【高橋秀明】