「試合が始まるまでどうなるか分からなかったんですけど…」大一番後に放った山本由伸の予想外の言葉
メジャー、NPB12球団の担当記者が「2024 A WORD」と題し、今季印象に残った言葉から当時を振り返る。 * * * * 予想外の言葉だった。「試合が始まるまでどうなるか分からなかったんですけど…」。10月11日(日本時間12日)。試合後の山本は不安から解放され、胸をなで下ろした。それほど追い詰められた山本の姿は想像もできなかった。2勝2敗で迎えたパドレスとの地区シリーズ第5戦。勝てば次のステージ進出、負ければ今季終了という究極の一戦の先発を託された。ロバーツ監督は試合前、「彼が人生をかけて投げる今日の試合にかける」と言った。 オリックスでは21年からNPB史上初の3年連続沢村賞&MVPを受賞。敵なしの状態で海を渡った。だが、メジャーのレベルは高かった。3月21日、韓国での開幕第2戦。パドレス相手に1回4安打5失点と自身最短KOで初黒星を喫した。パ軍には地区シリーズ第1戦を含め、それまで3試合で防御率13・00。癖がバレている可能性も指摘され、現地では起用を疑問視する声もあった。山本に対して、だ。日本では不調でもあり得なかった。 しかし、心は折れなかった。第1戦から中5日でフォームを修正し、配球も見直した。第5戦は第1戦から直球を9%増やし、平均球速は1・4キロアップ。「いい力感で投げることができました」と5回2安打無失点に封じ、ダルビッシュとの投げ合いを制した。パドレス戦の無失点は4試合目で初めてのことだった。 今季は右肩の負傷で長期離脱も経験したが、この試合でドジャースファンにも認められた。リーグ優勝決定シリーズ以降、本拠地で山本の名前がコールされた際の声援は明らかに大きくなった。「充実した1年間でした」。地区シリーズでのサンディエゴ遠征中にはE・ヘルナンデスに連れ出され、カフェで約2時間話し合った。リハビリ中のセントルイス遠征中には昨年のWBCで共闘したヌートバー(カージナルス)と食事して励まされた。支えられていることを改めて実感した年だった。(MLB担当・中村 晃大)
報知新聞社