眼鏡と浴衣姿で笑顔を見せる中村アン（カメラ・小泉　洋樹）

　女優の中村アン（３６）がテレビ朝日系ドラマ「青島くんはいじわる」（土曜・後１１時）で主演としてラブコメディーに挑戦している。モデルとして芸能界入りすると、バラエティー番組にも引っ張りだこのタレントとしても活躍。クールな印象で世の中に浸透し、ロングヘアを生かした「髪かき上げ」は女性の憧れの的となった。近年では女優としても飛躍しており、着実にキャリアを積み重ねている。その中で抱いた葛藤とこれからの理想像を語った。（松下　大樹） 【写真】「美の共演」大物ハリウッド女優と２ショット！ 　思わずイライラしてしまうような蒸し暑さが広がる７月某日。インタビュー前の仕事の関係で浴衣に身を包んでいた中村は「両親が佐渡島出身で、小さい頃に行ったときは浴衣着てましたね。中学生のときも夏は浴衣着て友達と花火見てました」と懐かしんだ。「大人になっても着られるのは、日常から離れる感じがして楽しいです」。洋服をカチッと着こなす普段の姿から一転、凜（りん）とした和服姿もまた魅力的だった。 　モデル、バラエティータレント、女優。時の流れとともに、さまざまな顔を見せてきた芸能生活について振り返り、赤裸々に語った。「求められないと私たちの仕事ってないので、頑張らないとっていうのはすごくありました。不安が常にあって、今も根底にずっとありますね」 　学生時代はチアリーディングに励んだ体育会系出身。「なかなか自分に満足できないタイプ」とストイックな性格で着実にキャリアを積み重ねてきた。 　一つひとつの仕事に真正面から向き合ったことで、世の中に自身の存在が浸透していった。「髪かき上げ」「クールで完璧」。中村アンといえば、こういったイメージを抱く人も多いだろう。自身も同じように「華やかだったり、自信がある女性みたいなのがだんだん染みついて…」と認識している。 　ただ、そのイメージだけを持たれていることに違和感を覚えていた。「私自身のパーソナルは、クールな感じでもないので…」。演技で求められるのも同じ役どころ。「お芝居でもクールとかツンツンとかのキャラクターが少なからずあるような気がして。割と一辺倒になりがちってのは自分でも感じてました」。うそ偽りない本心を打ち明けた瞬間だった。 　他の役柄を演じていないことに胸の内で葛藤を抱える日々。「他の役を頼んでみたいって思われてないんだろうなとか、逆に私が興味ないと思われてるのかなとか。新しいこととか、違う自分を見せていかないと私自身も自分に飽きちゃったし、ここ２、３年は違う自分を見せていかないとなと思ってました」。穏やかな表情を見せつつも、話しぶりに力強さが増していった。 　熱望するものがある。頭の中の理想像に合う最適な表現を探し出しながらゆっくりと話し始めた。「大きな声で騒ぐとか感情を出す役があまりなかった。伸び伸びしたこととか、もっと自由度が高いというか、もっと自分を出すというか、そういうのも取り組んでいきたいです」。クールも自身が確立した一つの大きな武器だが、他にまだ出し切れていない魅力があると信じている。 　２１年にトレードマークだったロングヘアを「自分の幅を広げたい」との思いでバッサリカット。その効果もあってか、“クール役”以外のオファーも徐々に舞い込んでくるようになった。 　７月から出演しているドラマ「青島くんはいじわる」もその一つ。年下男性社員に振り回される中堅社員の恋愛模様を描いたラブコメディーで主演を飾った。「ラブコメは私はあんまり多くないので、すごくやってみたいなと。殻を破っていかなければいけないところに差し掛かってる中でこのお仕事の話をいただいたので、また新たな一面を出せるなって思いました」 　中村が演じる中堅社員・雪乃について「計画性を持っているけど計画通りに行かなかった人」と分析しつつ、自身については「どっちかっていうと計画を立てられなくて、直感でそのときどきで生きているタイプなので…」と苦笑い。２０代は目の前のことに必死だったというが、「少しは計画性が必要になってくるんだなって最近は感じます」と長い目で将来を考えるようになった。 　その中で、ふんわりと描く未来像。「イメージをつけて世の中に出てきましたけど、いい意味ではぎ取っていきたいなって」。目の奥には熱く燃えるものがあった。「昔より今の方がいいねって言われるように年々なっていきたいです」 　インタビューが終わる頃には、どこか吹っ切れたような明るく爽やかな顔つきになっている気がした。 　◆中村　アン（なかむら・あん）１９８７年９月１７日、東京都出身。３６歳。２０１５年、フジテレビ系「５→９～私に恋したお坊さん～」で本格的に女優としてドラマデビューを果たすと、フジテレビ系「ＳＵＩＴＳ」、ＴＢＳ系「グランメゾン東京」「日本沈没―希望のひと―」など話題作に出演。身長１６１センチ。