一人暮らしの80歳が「共同生活」を選択したワケーー“そこそこ健康な高齢者”が「終の住処」に選んだのは、老人ホームやシェアハウスとも違う住まい方
1996年から旧厚生省も「高齢者グループリビング支援モデル事業」をスタートさせたが、助成金の指定条件が限定される面もあり、運営主体の主流は民間の非営利組織や個人オーナーが多い。 血縁関係もなく、気の合う仲間同士のシェアハウスとも違う、高齢者たちの共同生活。おでんせの場合、居住者11人のうち半数近くが小森さんのように一人暮らしだった人がほとんどだ。 個室の広さは約17畳でバス、トイレ、キッチン付き。10室のうちペット可の4室は独立したゾーンに配している。また隣り合う居室の場合、間にランドリースペースと吹き抜け等を配置しているので、隣室の生活音が漏れ聞こえることはまったくない。
「お部屋にいれば完全に一人暮らしの世界。ベースは共同生活ですけれど、四六時中、皆で集まって何かしているわけではありません。共同生活のルールは毎日のお夕食、誕生日会と月に1回の居住者会議への参加だけです。 誕生日会は主役のご本人が食べたいものとケーキをリクエストできるんです。それこそステーキでも鰻でもお寿司でもなんでも。ワインもつきます。皆でごちそうを食べながらお祝いして、楽しい宴ですよ」 そのほかに、毎週もしくは隔週で同好会の活動もある。手芸・編み物や折り紙、フラワーアレンジメント、カラオケ、お茶などさまざまな会があり、居住者が講師も務めて楽しんでいる。
月1でオーナー夫妻が主催する朗読会もあり、それぞれの活動には居住者の友人など外部の人が参加することもあるのだという。 ■「終の住処」に求める3つの条件 入居9年目。軽やかに館内を案内してくれる小森さんは、89歳という年齢にはとても見えない。まだまだ一人暮らしも続けられそうだが、住み替えを決めたきっかけは、マンションの階段の上り下りがきつくなってきたことだったという。 「エレベーターのないマンションの3階に住んでいたのですが、75歳を過ぎた頃からだんだんきつくなってきましてね。それでやっぱり自分に嘘はつけないなと思いました」