一人暮らしの80歳が「共同生活」を選択したワケーー“そこそこ健康な高齢者”が「終の住処」に選んだのは、老人ホームやシェアハウスとも違う住まい方
“そこそこ健康な一人暮らし”の高齢者にちょうどいい住まいはどこにある? 「老後の不安」とはまるで自分との先物取引のように思えた。 「平均寿命が延びてどんどん高齢者が増えていくのに、日本は大丈夫なのかって心配になりました。これは本当に大変だぞって。何が不安で何が大事か。遠くない将来図を見定める自問自答の日々でした」 その当時、小森さんは終の住処探しと並行して在宅療養中の姉のもとに1日おきに通って、姉の家族とともに身の回りのサポートをしていた。
小森さんは姉の日常を見ながら、人の手や目がほどほどに行き届くならば、必要な介護サービスだけ利用したら案外自分らしく暮らし続けられることに気がついた。しかし問題は、自分には姉のように同居の家族や子どもはいないことだ。 ■70歳から80歳までの10年で現れる「肉体の変化」 そして終の住処探しが3年目になったある日、姉の自宅のポストに入っていた「グループリビング、オープン」のチラシで、おでんせに出会ったのである。偶然の出会いだった。
オーナーの藤井さんが2015年11月に立ち上げたおでんせは、2022年11月に一般社団法人おでんせ中の島として法人化された。居住者全員が社員となり、初代理事長には藤井さんが就任。そして今年、小森さんが2代目理事長に就任した。 小森さんは、70歳から80歳までの10年で現れる肉体の変化は、暮らし方にも影響が出ることを実感している。 まず、耳が遠くなる。足腰が弱くなる。物覚えが悪くなる。そうした体の不便が、ときに人をわがままにする。自分で物事を決められなくなる。だからこそ共同生活が支えになると、小森さんは思う。
「今、ここで暮らしているのは、似たような年代で、一人暮らしに不安を感じて、何かつかまりどころというか、人のつながりを探していた人たちです。老化は誰も通る道として衰えをわかり合い、認め合いながら、皆が皆を“見守る目”になっていける。そういう雰囲気作りをすることが、理事長の私の役割だと思っています」 自分を見守ってくれる目があり、自分も誰かを見守る目になる。気になることは事務局スタッフに伝えて情報を共有し、必要に応じて福祉につなげていく。