愛猫「はち」と「ハナ」との暮らしに事件 約2カ月に及んだ飼い主自身の緊急入院
ツレアイと過ごす日々
だが、心配は無用のようだった。最初は2匹とも私の部屋でウロウロしていたようなのだが、そのうち行かなくなったという。私がいないから、というより、「暖房を入れなくなって寒いから」というのがツレアイの見解だった。 2匹とも快食快便で、日中は、家でもっとも日当たりのよいダイニングキッチンで過ごすことが多くなったようだった。ツレアイは、皆が別々の部屋に分散すると光熱費がかかると考え、自分のベッドマットをダイニングキッチンに移動させ、そこで寝起きもするようになった。 寝るときは1人を好むツレアイは、猫たちがやってくると「きみたちはあっちで寝なさい」と言い、キッチンとリビングの間に垂らしたカーテンを閉めるようにした。すると、消灯以降はいっさいキッチンには入ってこなくなったという。 毎年、年明けには猫たちに定期検診を受けさせることにしていた。ツレアイは、これまで1人で動物病院に猫たちを連れて行ったことはなかったが、頼むと、引き受けてくれた。病院の待合室では「ニャーニャー」の大合唱で、いいおじさんが2つのキャリーバッグをたずさえて座っているのが恥ずかしく「『僕は代理で来ています』という札を首から下げたかった」と、あとでツレアイは言った。
さぼっていた自身の体調管理
幸い、2匹とも健康状態に問題はなかった。だがもし、猫たちに何か大きな病気がみつかっても、物理的にも金銭的にもこのとき治療をするのは難しかったかもしれない。私のほうが、まだ最低1カ月半は入院治療が必要と医師から言われていたし、その間の仕事はすべてキャンセルしてしまったからだ。 このとき、私は実感した。猫の健康管理も大切だが、もっとも重要なのは、飼い主の体調管理だ。これまで病気らしい病気を一つもしたことがなかった私は、自分を過信していた。猫の定期検診は毎年欠かさなかったくせに、人間のそれは、何年もさぼっていた。 こうして、緊急入院から約2カ月後のひなまつりの翌日、私は杖をつきながら無事退院し、久しぶりに猫たちと対面することになった。