考察『光る君へ』39話 惟規(高杉真宙)の死がまひろ(吉高由里子)と賢子(南沙良)をつないだ。道長(柄本佑)は娘の件に気づいているのかいないのか
これはアカン
道長と倫子の次女・姸子(きよこ/倉沢杏菜)が東宮・居貞親王の后になる。居貞親王は姸子より18歳も年上で、親子ほどの年の差婚だ。 「スラ―ッとしていても年寄は年寄でございます」 容赦ない言葉だが15歳の少女にしてみれば、そうだろう。姸子が入内した先には居貞親王の嫡男・敦明王がいる……りりしく美しく、そして姸子と同い年。御簾越しに義理の息子の姿を見つめる彼女の目が輝いている。 敦明王は右大臣・顕光(宮川一朗太)の娘・延子(のぶこ/山田愛奈)と正式に結ばれたが、波乱の予感がする。 波乱の予感といえば、元服を迎える敦康親王(片岡千之助)だ。先週までの子役(渡邉櫂)の敦康親王と同じ髪型、同じ装束にする演出が「これはアカン! 一刻も早く元服させて、この美しい義母から離さねば!」と視聴者が焦る仕掛けになっている。 彰子はこれまで通り接するが、彼女の手を握る敦康親王の手に込められた力、まなざしが……これはアカン。 まひろの局で道長が言う 「敦康様はお前の物語にかぶれすぎておられる!」 敦康親王が彰子に惹かれているのは『源氏物語』にかぶれたからではなく、彼の心から生まれた思慕、愛だろう。まひろでなくとも「ハア?」てなるわ。影響を受けているのは道長本人だ。 この場面、フィクションと現実の区別がつかない読者って困るわぁという原作者の顔をしているまひろがよい。
惟規の死
惟規が従五位下に昇進! おめでとう! 五位が身にまとう赤い束帯を、すでに乳母・いとは準備してあるという。 いと「いつかこういう日がくると思ってご用意しておりました」 ずっと信じて見守ってきてくれた人の存在は、何ものにも代えがたい。更に為時が、越後守任官。父と息子が揃って赤い束帯で参内する誇らしさ……道長に惟規は、 「姉は気難しくて人に気持ちが通じにくいのでございますが、どうぞ末永くよろしくお願いいたします」 まるで結婚披露宴での、新婦弟から新郎へのメッセージのようだ。 惟規の昇進、為時の越後守任官、賢子の裳着。まひろの実家はおめでたいこと続きである。 賢子の裳着の夜に、まひろと惟規姉弟の思い出語り……。 惟規「きっと……みんなうまくいくよ。よくわからないけどそんな気がする」 まひろ「調子のいいことばっかり言って」 まひろの過去の悲しみも痛みも知っている弟。いつもさりげなく慰め励ましてくれる弟だ。 そして悲劇は突然襲い掛かる。 越後に向かう為時に同行した惟規が病に倒れたことは『今昔物語集』などに記される。 惟規「左大臣様に賢子のことを」 苦しみの中でも家族のことが、姪の賢子の今後が気がかり……本当に優しい男だ。 辞世の歌を書きつけるとき、自分を抱く父を嬉しそうに見上げる惟規に泣いてしまう。 みやこにはこひしき人のあまたあればなほこのたびはいかむとぞ思ふ (都には恋しい人がたくさんいるから、なんとしても生きて帰りたいと思う) 息子に先立たれた為時の慟哭と、彼が愛した人々──家族の、いとの嗚咽が響く家の様子がつらい。唯一の救いは、泣き崩れるまひろをそっと支える賢子。「いつか必ずわかりあえる日がくる」と慰めてくれた惟規の死が、まひろと賢子をつなぐ。 いつも朗らかな惟規は、この作品を温かく照らしていました。あなたが去って悲しい……。 お疲れ様でした。 次週予告。一条帝に忍び寄る病魔、喜びを隠せない居貞親王。次の東宮は誰かで揺れる朝廷。「罪のない恋なぞつまりませんわ」和泉式部(泉里香)がトンチキ癒し枠になるとは予想してなかったです。謎の男が3週間ぶりに登場? 激高する彰子。サブタイトル「君を置きて」の「君」とは……! 40話が楽しみですね。 ******************* NHK大河ドラマ『光る君へ』 脚本:大石静制作統括:内田ゆき、松園武大 演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろう 出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、見上愛、塩野瑛久、岸谷五朗 他 プロデューサー:大越大士 音楽:冬野ユミ 語り:伊東敏恵アナウンサー *このレビューは、ドラマの設定(掲載時点の最新話まで)をもとに記述しています。 *******************
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