美術館にモードが誘われるとき:ポンピドゥー・センターの特別展から見るアートとファッションの共鳴
4着目はコムデギャルソンとフランシス・ピカビアの展示だ。コムデギャルソンの衣装は「ランドスケープ・オブ・シ ャドー」をテーマに発表された、モノクロを主とした2021-2022年秋冬コレクションのもの。ピカビアの『ウドニー(若いアメリカの少女:ダンス)』から目に飛び込んでくる基調となる黒、彩色との対比が美しい。 続いてはポピー・モレニとジョルジュ・ルオーのペアだ。モレニの衣装は1988-1989年秋冬コレクションから。ルオーの『道化師』と響き合う。
この場所からは少し展示手法に変化が入る。今まで壁沿いに飾られていた衣装が中央に。その周りを絵画が囲む形だ。 現在27歳のヴィルモラン。次世代を牽引するデザイナーは、帝政ロシアに生まれ、パリにおいて活躍したソニア・ドローネーの作品群のパートナーに選ばれた。両者の色彩が訪れる者を惹きつける。 7番目はイリス・ヴァン・ヘルペンの2019年春夏オートクチュールコレクションだ。対するは、マルク・シャガールの『エッフェル塔の新郎新婦』である。宇宙をイメージして作られたヘルペンによる青の衣装と、シャガール絵画の特徴である「シャガール・ブルー」の対比が美しい。
前半の最後は、チュニジア出身のアズディン・アライアの2003年オートクチュールコレクションが、マルセル・ブロイヤーの食卓と椅子に組み合わされていた。絵画だけにとどまらない、ベナイムによるキュレーションの妙である。
シャネルの衣装が醸し出す当時の雰囲気
後半最初はガブリエル・シャネルが飾る。衣装は1925年から1930年のオートクチュール のもので、クリスチャン・シャドが1927年に描いた『サン・ジェノワ・ダノクール伯爵』の横に並ぶ。
1920年代はジャズやありとあらゆる仮装で熱狂した時代。ベルリンはアートとパーティーの首都だったという。同時代の息吹を双方から感じる。