Web3はコミュニティのためにある。資本主義の上に新しいレイヤーを作り出す──CAMPFIRE代表取締役 家入一真氏【2024年始特集】
コモンズ概念を取り入れたWeb3
──自由民主党のweb3プロジェクトチーム(web3PT)がDAO(分散型自律組織)の法整備を進めていますが、新しいプロジェクトはDAO的なものを想定しているのでしょうか 家入:まさにDAOのようなものになると思います。今、全国で「地域おこし協力隊」に参加し、活動している人たちがいて、僕らも地域おこし協力隊に特化したクラウドファンディングをリリースしました。ですが、活動への思いは持っているものの、地域のコミュニティに馴染めていない人もいます。孤軍奮闘になってしまい、地域での起業を考えていたとしても踏み出せない人もいます。そういったときにノウハウの共有や人の紹介を通じてコミュニティやネットワークを形成できれば、もっとさまざまなプロジェクトが立ち上がるかもしれません。これをひとつのテストケースとしてプロダクト開発を進めています。自律分散型で各自が動いた結果、多様なプロジェクトが立ち上がり、そこに貢献することでトークンが得られるといった仕組みを、絵に描いた餅ではなく、活動している方とともに実際に使えるものを作っていきたい。 持続可能な地域をどう作っていくか、社会的な共通資本を地域を持続させるためにどう使っていくかといったコモンズ(共有資源を共同管理する仕組みや空間)の概念を取り入れたWeb3をどう実装していくかが重要になると考えています。地方は、もはや行政に頼るだけでは問題が解決できない現状も生まれています。人口が減るなかで財源も減り、医療や教育が立ち行かなくなりつつあります。行政に求めるだけでなく、「自分たちでどう継続させていくのか」という考え方も大切になってきています。僕たち自身でどうやって、これからの経済や地域を持続させていけるか。共同体やコミュニティを作り出していけるか。そのときにテクノロジー、ツールとしてブロックチェーンやDAOは非常に有用なもので、むしろこのために存在するものと考えています。 ──2024年はどんな1年になると思われますか 家入:国境を超えてGAFAなどが台頭し、国の定義が曖昧になっていく世界がありました。今は国が自分たちの輪郭を取り戻そうと、改めて国境線を引き直し、中央集権的な力を取り戻そうとしています。その一方で、DAO的な自律分散の流れが同時に生まれている時代だと感じています。 「行き過ぎた資本主義」などと言われますが、生きづらさを抱えたり、しんどい思いをしている人たちがいます。環境問題や戦争など、持続可能ではないことがいろいろ起きていますが、その半面、資本主義には強さがあり、簡単には否定できません。であれば、資本主義というレイヤーの上に新しいレイヤーをどう作っていくかが重要になります。個人個人が小さな経済圏をつくり、お互いに重なり合って、支え合うコミュニティを作る。そういう世界観を描いています。 2024年なのかどうかはわかりませんが、日本経済はどこかでクラッシュするかもしれません。また、しんどい思いをする人たちが生まれてしまいます。それを待ち望んでいるわけでは決してありませんが、そこから新しいテクノロジーが当たり前に使われるようになり、大きな変化が起きていくと思います。そこに向けて、人々が1人ぼっちにならなくていい世界を作りたい。そのひとつの答えがコミュニティだと考えています。 家入一真2003年、paperboy&co.(現GMOペパボ)を創業、2008年、JASDAQに市場最年少で上場。2011年、CAMPFIREを創業。2012年、BASEを設立、2019年に東証マザーズに上場。2021年、Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング 2021」第3位に選出。 |インタビュー・文:増田 隆幸|写真:小此木愛里|執筆協力:水野公樹
CoinDesk Japan 編集部