打倒ランボルギーニ、ニュルブルクリンク最速! GT3のさらに上をいく「ポルシェ911」とは
2024年10月、ポルシェジャパンは、911や718をベースとした高性能バージョンのGTモデル(911GT3、718 GT4)の性能を最適化し、サーキットでの走行性能を向上させるアップグレードキット「ポルシェマンタイパフォーマンスキット」を発売した。これは公道走行可能なレーシングカーといえるGTモデルに、ポルシェ自らがさらにチューニングを加えたものだ。飽くなき速さの追求の源泉とは何なのだろうか。 【写真10点】ポルシェ911、ポルシェマンタイパフォーマンスキットetc.
きっかけは“イタリアの友人”に記録を破られたこと
ポルシェ911シリーズには「GT2」や「GT3」、718ケイマン&ボクスターには「GT4」といったGTモデルがラインアップされている。これらの開発はポルシェのレーシングカー部門が手掛けており、サーキット走行を主眼においたポルシェの市販車最速シリーズともいえるものだ。限りなくレーシングカーに近い性能をもちながら公道走行も可能なため、ジェントルマンドライバーが休日に自走でサーキットへ出向いて全開走行を楽しみ、そのまま自宅へ戻るといった使い方を想定したものだ。 ただでさえ超高性能ないわばメーカーチューンドモデルであるGTモデルを、なぜポルシェはさらに改造する必要があったのか。そのきっかけをこのキットの日本発表に際して来日していた担当者は、「イタリアの友人にニュルブルクリンク北コースでのタイムを破られたから」と話していた。 ここで少しだけ補足すると、ニュルブルクリンクとはドイツ北西部にあるサーキットのこと。グランプリコースと呼ばれる1周約5.1kmのコース以外に、ノルドシュライフェ(北コース)という1周約20.8kmのロードコースがある。路面はアスファルトだけでなく、コンクリートも混在し、起伏はとても複雑で、コーナー数170以上、高低差は約300m、1周を走行しているあいだに雨が降りだすなど天候が変わることも珍しくない、その過酷さから“グリーンヘル(緑の地獄)”とよばれる世界屈指の難コースだ。 このコースを走破できるならば、世界中のどこの道でも速く走ることができるといわれ、いまでは世界中の自動車メーカーがここで開発テストを行い、タイム計測を行うようになった。トヨタ自動車の豊田章男会長が副社長時代にこのコースに惚れ込み、以降トヨタのクルマづくりが大きく変わったのは有名な話だ。他の日本のメーカーにとっても、日産GT-RやホンダシビックタイプRなど、スポーツモデルの開発には欠かせない聖地となっている。 そしてこのニュルブルクリンクをホームコースとするのがポルシェだ。911などのスポーツカーだけでなく、マカンやカイエンなどのSUVも必ずここでの開発テストを重ねてきた。 2017年、さきの“イタリアの友人”が、宣戦布告を行った。その友人とはランボルギーニ。当時、ニュルブルクリンク北コースにおいて公道走行可能な市販車としての最速タイムは、ポルシェの「918スパイダー」がもつ6分57秒という記録だった。ランボルギーニは「ウラカン・ペルフォマンテ」で6分52秒01のラップタイムを記録し、史上最速への名のりをあげた。 ホームコースでポルシェが負けることは許されない。ポルシェは「911 GT2 RS」で6分47秒3という新記録を打ち立てた。しかし、イタリアの友人、ランボルギーニも引き下がらない。2018年には「アヴェンタドールSVJ」が6分44秒97という記録を樹立。ニュルのラップタイムはものすごいペースで更新されていくことになる。