「曲芸みたいなゴルフをリアルに」 「オーイ!とんぼ」原作のかわさき健さんに聞く(上)
漫画「オーイ!とんぼ」(ゴルフダイジェスト社)には、原作者のかわさき健さんはプロゴルファーを目指していた経験が生かされている。読者を引き込むストーリーや魅力的なキャラクターを生み出す秘訣を聞いた。 【写真】「オーイ!とんぼ」の漫画の一場面より ーー「オーイ!とんぼ」の世界観はどうやって思いついた 「最初は長崎県の五島列島にある小値賀島(おぢかじま)に島民が作ったゴルフ場があって、そこを舞台にしてはと思った。すると当時のゴルフダイジェスト社の編集主幹が『もっと田舎がいい、吐噶喇(トカラ)列島はどうか』と。トカラにゴルフ場はなく、ないのにゴルフ漫画なんてどうしたらいいんだと思ったが、実際に行って風景をみたら、イメージが広がった」 ーー主人公のとんぼは球を上下左右に自由自在に操って、思いもよらない攻略法で周りを驚かす 「僕が大好きだった、スペインのセベ・バレステロスという選手をモデルにしている。幼少期に3番アイアンのヘッドに木を差し込んで、たった1本でゴルフを覚えて、世界を席巻した。彼の曲芸みたいなゴルフが好きだった」 ーーゴルフ専門誌だからこそ書ける物語とは何か 「ゴルフダイジェストは専門誌だから下手な作品を書くと読者にあり得ないと思われてしまう。納得してもらえるものを積み上げてシーンを作っていくプレッシャーがある。リアリティーは常に考えている。漫画の一番の魅力は荒唐無稽さ。でも今の時代、本当の荒唐無稽さを書くとみんな離れてしまう。リアリティーを積み上げると、とんぼならこんなこともあり得るとなる」 ーーとんぼのキャラクターはどうやって出来上がったのか 「日本最後の秘境で1本のクラブでゴルフを覚えた女の子は普通の人とは価値観が全く違うと思っている。その価値観に沿ってキャラクターを動かせば、勝手に愛されるキャラクターになると思った」 ーー物語の着想は 「(プロゴルファーを目指していた)自分がやってきた経験がたくさん入っている。ゴルフではこういうことが起きるよねということを書く。第2期アニメの九州女子選手権でいうと、初日で『島さん』という主婦ゴルファーが出てくる。このキャラクターは一番の冒険だった。島さんはゴルフがそこまでうまくないのだけど、ジュニアの中に入って大会に出続けている。あれも僕の経験で、一般のゴルファーにはそう戦っている人もいるんだというのを入れたかった」 ーー好きなキャラクターは