「キングメーカー争い」に岸田氏“完勝”で麻生氏“完敗”…石破氏が「大逆転勝利」した自民総裁選の舞台裏
そして迎えたのが開票結果の発表。逢沢一郎選管委員長が事務局に手渡された紙をみながら「高市候補194票」と読み上げた瞬間、高市氏の顔が強張り、続いて「石破候補215票」と読み上げると、石破氏はいったん顔を伏せ、メガネを外して涙を拭ったうえで立ち上がり、場内の祝福の拍手に控え目の笑顔で感謝の意を表した。この大団円の瞬間には、会場内のほとんどの議員達が喜び、あるいは落胆だけでなく、多くが割り切れない表情で周囲を見回すという、過去の総裁選では見られなかった光景が、生中継のテレビ画面にも生々しさを伴って、映し出された。
こうした約1カ月半にわたった「総裁選劇場」の盛り上がりと、劇的だった石破新総裁の誕生を受け、各種世論調査での内閣と自民党の支持率上昇は確実視され、それが「電撃解散断行につながった」(自民長老)のは間違いない。ただ、「党・内閣人事での『石破支持議員偏重』が際立ったことでの党内分断」(同)も目立ち始めている。 これに対し野党側は「そもそも、裏金事件への国民の厳しい評価は、総裁が代わっても変わらない」(立憲民主幹部)と攻勢を強めており、次期衆院選で「日本をもう1度、みんなが笑顔で暮らせる安全で安心な国にする」と訴える石破首相にどのような審判が下るかは、「新政権に対する1億有権者の評価次第」(政治ジャーナリスト)であることだけは間違いない。
泉 宏 :政治ジャーナリスト