「『アンタなんか置いて帰るよ』は虐待だと?」ショッピングモールで走り回る「孫」を笑顔で眺める「姑」への違和感
年の瀬も押し迫り、繁華街やショッピングモールは、年末の買い出しをする家族連れなどでにぎわいを見せるようになってきた。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、お子さん連れでの買い物についてこう話す。 この記事の他の画像を見る 「最近は公の場で子供を叱るとき、周囲から『虐待だと思われたらどうしよう』と一瞬考えてしまう人もいると聞きます。それだけ虐待への意識が高まっているとも言えますが、常に議論になるのが「しつけ」か「教育」か。育児は一筋縄ではいかず、大変難しい問題です。 厳しく注意しすぎて「家族みんなの楽しい気分が台なし…」などとならないよう、怒りをコントロールしながら、お子さんを導いてあげられたら良いですが、人間は感情の生き物。きれいごとだけでは済まないのが育児のつらいところですよね」 ・・・・・・・・・・ 今回は、「子供に対して怒りが制御できなくなり、『脅し』のようなセリフを言ってしまうことがある」という30代の女性からその悩みについて話を聞いた。 「うちから車で10分ほどの場所に新しいショッピングモールがあります。家もその立地条件に惹かれて購入したほど、家族みんな『モール』好きなんですね」 こう話すのは34歳の専業主婦・八木沢美里さん(仮名)。人口40万ほどのおだやかな地方都市で、夫と一緒に5歳と1歳の2人の子を育てている。 「平日、夫がいない時間はもちろんワンオペ育児です。イライラする時もあるんですけど、上の子がこども園に行っていることもあって、頻繁に怒りを爆発させずに済んでます」 子供の「グズり」にいらついたり、わがままに腹を立てたりすることはいくらでもある、と美里さんは言う。 「でも大声で叱ってるうちに、『こんなにひどいこと言っちゃダメ』って気持ちも自然に出てきます。家の中では怒りが暴走しやすいけど、逆に『まずい』と思ったらすぐブレーキをかけられることもあって…」 人の目がないせいか、すぐに鬼の形相をゆるめ、子供に駆け寄って「ごめんね、今のは本当の気持ちじゃないよ。ママ、言い過ぎちゃった」と、言葉を撤回することもよくあるのだそう。 「子供からしたら『ツンデレ』で迷惑なのかもしれませんが、怖がらせちゃったかもしれないなら素直に謝るようにしてます。でも、そういう普段の私と子供のやりとりを夫や姑は知らないから、人前で叱っちゃう私だけを見て『鬼』だと思ってるんですよね」 毎週末のように家族で訪れるショッピングモールでは、どうしても子供の行動に敏感になりすぎてしまい、ワンオペの時に実践している「ツンデレ」や「感情のコントロール」がなかなかうまく行かない、という美里さん。 「前に、上の子がショッピングモールの通路を全力で走り出したことがあって、私は下の子を乗せたベビーカーを押していたので追いつけず、『ねえ、ちょっとそこでストップよ』と声をかけたんです」 しかし、上の子は止まらずに走って行こうとした。 「夫がお店やスマホの画面見たりしながら余裕かましてるので、『ねえ、走って行っちゃったよ、止めてよ!』と頼むと、後ろから姑が『どうせキッズコーナーに行くんだから、追いつけばいいじゃないの。嬉しくて気持ちがはやってるのよ』と口を挟みました」 美里さんは「店内を走ること」をやめさせたかっただけだが、姑はそこはあまり気にならないようだった。「あんなにはしゃいじゃって…」と目を細めていたという。 「妊婦さんとか、大きな荷物を持った人でごった返している通路を、うちの子がすごい勢いで飛んでったので何とかしなくちゃと思って『言うこと聞かないと、もうお家に帰るぞ!』と子供に聞こえるように結構大きめな声で言ったんです」 美里さんの子は一瞬振り向いたが、自分に甘い姑がいる安心感もあってか、再び走り出そうとした。そこで怒りのギアが上がった美里さんは… 「『おい、いい加減にしろよ!そんな子は置いて帰るからな!』ってつい怒鳴っちゃったんです。そのくらいの言葉遣いは普段から全然してるんですが、私の言葉と声のボリュームに姑がギョッとしたみたいで」 義両親の前ではそれなりに気を使ってきたため、姑は美里さんが怒鳴る姿をあまり目にしたことがなかったのかもしれない。子供のあとを早歩きで追う美里さんを止めたのは、姑の一言だった。 「『ねえ、みーちゃん。いい加減にしろよ、なんて母親が使う言葉?おー怖い』って…」 日ごろ一番使っているかもしれない言葉への不意の指摘に、戸惑ってしまったという美里さん。 「それに、置いて帰るなんて言ったら、あの子のトラウマになるじゃないの。それ、心理的な虐待なんじゃない?あなた、虐待で通報されちゃうわよ。そもそも、孫が怖い夢でも見たらどうすんのよ!』って姑に言われました。私は『は?』って…」 その程度の「脅し」なら、世の中の母親はいくらでも使っているではないか。姑の「苦言」に対し、美里さんはそう思った。姑に責められて動揺する美里さんに、そのあと夫がかけた驚きの言葉と、そのあと起きた家族の根底をゆるがす事態とは?言葉や態度による虐待とは何なのか、記事の後編にて詳報する。 ※この記事は取材に基づいていますが、取材対象者保護の観点から必要に応じて編集を加えておりますことをご理解ください。 取材・文/中小林亜紀 PHOTO:Getty Images
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