久保建英A代表デビューの衝撃を長友は「ドラえもん」と評した
ベンチから戦況を見つめながら、長友佑都(ガラタサライ)は幾度となく錯覚を覚えた。ひとめぼれスタジアム宮城のピッチで輝きを放つ日本代表の可愛い後輩が、時代を超えて不滅の人気を誇るアニメの主人公にダブって見えたからだ。 「本当に『ドラえもん』みたいだと思って。引き出しのなかにアイテムが多すぎて、次に何を出してくるかわからない。練習や今日の試合を見ていても読めないんですよ」 日本代表で歴代3位となる通算117キャップを獲得。3大会連続でワールドカップを戦い、セリエAの名門インテルでも7年間にわたってプレーした百戦錬磨のベテランを絶賛させたのは、目の前で堂々のフル代表デビューを飾った18歳、MF久保建英(FC東京)だった。 エルサルバドル代表に2-0で快勝した9日のキリンチャレンジカップ2019。MF南野拓実(ザルツブルク)に代わって久保が投入された後半22分に、日本代表における年少出場記録の歴代2位に「久保建英」の名前と「18歳5日」という年齢が刻まれた。 「スタジアムがけっこうオープンな感じだったのに、(交代で入る前に)めちゃワーッと聞こえたので。何かピリピリじゃなくて、ひしひしと(ファンやサポーターの)期待を感じました」 5日のトリニダード・トバゴ代表戦に続いて3バックで臨んだ森保ジャパンは、後半14分から慣れ親しんだ[4-2-3-1]システムへスイッチ。南野が務めていたトップ下に久保はそのまま入った。 FC東京ではトップ下を置かない[4-4-2]システムのもと、今シーズンから中盤の右サイドで不動の地位を築き、フル代表抜擢へと結びつけた。もともとは前線のどこでもプレーができるが、なかでもトップ下は「やりやすいので、特に問題はありません」と言い切る。 自信がそのままプレーに表れ、長友の言う「ドラえもん」のポケットから最初にアイテムが取り出されたのは、投入されてから6分後の後半28分。ピッチ中央でFW大迫勇也(ベルダー・ブレーメン)が浮き球を収める体勢に入ったとき、右側にいた久保はすでに前方へ走り出していた。 「大迫選手は誰が見てもわかる通り(実力が)ひとつ抜けていますし、何でもできるとういか、ボールもつなげるし、前も向ける。あんな選手が横にいたらやりやすい、というのが素直な感想です」 前を向いた大迫からのスルーパスを呼び込み、右サイドの奥深くへドリブルで進む。マークについたエルサルバドルの選手2人を引きつけた次の瞬間、左足で軽くボールにタッチして左側へ押し出す。自らもスピードをほとんど落とすことなく、左側へ急旋回して2人の間を鮮やかに突破した。