「あの居酒屋の売上は?」で“人材の質”見抜ける訳 「フェルミ推定は無意味」に対する数学的な反論
売上=飲み物+食べ物 ここで再び、「メイン」と「そのほか」という視点を持ち込み、アルコールが「メイン」でノンアルコールが「そのほか」、主菜が「メイン」でおつまみが「そのほか」と考えます。 売上=(アルコール+ノンアルコール)+(主菜+おつまみ) さらに、再度「そのほか」を除外すると、 売上=アルコール+主菜 という、居酒屋の売上の「メイン」だけが残ります。つまり、居酒屋の売上を推定するためには、アルコールと主菜のことだけ考えればいいのです。この状態にしてから数値を仮定してざっくり概算すれば、大枠の数字は十分に捉えることができます。
しかし、「最初から完璧な回答を目指さない」という感覚がない人は、上記の例において「そのほか」もちゃんと正確に計算しなければと考え、いつまでも思考の対象として残してしまうのです。 ノンアルコールの飲み物やおつまみの売上を一生懸命考えたところで、最終的な成果に大きな影響はないでしょう。最悪の場合、そこでおかしな計算をすることで全体の売上規模を間違えてしまう可能性もあります。ならばそのようなものは大胆に捨ててしまえばいいのです。
■「選択と集中」の能力を見抜く 私の指導現場での経験則になりますが、時間をかけて細かい数字まで追いかける人ほど、最終的な結果で大きく桁を外したりするケースがあります。そういう意味で、フェルミ推定の問題を短時間でうまく処理する人は次の2つの特徴があるといえます。 ①「メイン」と「そのほか」に分類する ②「そのほか」を躊躇なく捨てて考える この2つを満たす人物は、本当にビジネスで成果を出す人材なのでしょうか。絶対と言い切れるわけではありませんし、例外はあるかもしれません。しかしそれでも私は自信を持って「概ねYES」と答えます。
物事をなんでも「メイン」と「そのほか」に分類できるということは、いつどんな時でも大切なものとそうでないもの、主従関係の主と従など、2つに分類する考え方が染み付いていることを意味します。 たとえば成果を出す経営者はまさにこれができる人ではないでしょうか。重要なこととそうでないことに分け、そうでないものは容赦なく捨てる。選択と集中。難しいことですが、間違いなくそれができる人物のはずです。 成果を出す人は、フェルミ推定が上手だから成果が出るのではなく、「メイン」と「そのほか」に分類し、「そのほか」を躊躇なく捨てることができる人だから結果的に成果が出せていると理解できます。