「あの居酒屋の売上は?」で“人材の質”見抜ける訳 「フェルミ推定は無意味」に対する数学的な反論
そもそも、なぜ企業はフェルミ推定の研修を求めるのでしょうか。研修担当者にその理由を尋ねると、「社員の思考力を強化したい」といった答えが返ってきます。しかしこれらを掘り下げると、要するに「もっと頭がいい従業員が増えてほしい」という本音が出てきます。 さらに深掘りすると、「大きな声では言えないが、けっきょく頭のよさが業績に直結している」という第2の本音を教えてくれます。 ■細部は捨てて、大枠を捉える この第2の本音は、企業が採用面接でフェルミ推定を使いたがる理由の説明にもなっています。
フェルミ推定の問題を出題すると、その結果は大きく3種類に分類されます。 ①大まかに実態を捉えた回答が素早くできる ②時間をかけた割に実態から大きく外れた回答をする ③どうアプローチしたらいいかわからず思考停止する まず③は明らかに企業が求める人材ではありませんので、採用面接としては厳しい結果になるでしょう。そこで注目していただきたいのは、①と②の違いです。 じつは①の人は持っているのに②の人は持っていない感覚があります。それは、「最初から完璧な回答を目指さない」という感覚です。なぜその感覚を持っているかというと、細部まで正確に考えようとすることで、大枠を間違えてしまうことが多々あることを知っているからです。
このような感覚を持っている人は、物事を常に「メイン」と「そのほか」で大胆に分類することができます。いまその場面でテーマにすべきものとそうでないものをはっきりさせる能力です。 たとえば、居酒屋の売上を推定するとして、その内訳を因数分解し、むりやり「メイン」と「そのほか」に分けてみます。 売上=飲食+飲食以外 居酒屋において「飲食以外」は実際にはあまり考えられません。洋服を売っている居酒屋が絶対にないとは言い切れませんが、そのような例外を考えることはあまり意味がないでしょう。そこで、「そのほか」は考慮に入れないことにし、「飲食」を2つに分類します。