定年間際に教員を退職し、服を変えたら人生も変わった。「60代は目立っていい」と、背中を押されて
◆「60代は目立っていい」と、背中を押されて 『着る学校』のレッスンに参加してまず感じたのは、「西先生はぶっ飛んでいる!」ということです(笑)。私自身もそうですが、ある程度の年齢になったら「年相応の恰好をしなきゃ」と思っている人が多いでしょう。でも、西先生には「年相応」という考え方がまったくない。年齢なんていっさい気にせず、いつも自分の好きなおしゃれ楽しんでいらっしゃる。こんな70代の女性がいるのかと新鮮でした。さらに印象的だったのは、「60代は目立ちなさい。70代はとんがりなさい」という言葉。「そうか、60代は目立っていいんだ」と、背中を押されたような気持ちになりました。 というのも、教員時代の私は「これは学校に着ていっても大丈夫?」という視点で、常に服を選んでいたのです。生徒たちはきちんと制服を着て授業を受けているわけですから、教える立場の私も学習の邪魔にならないような服を着なければと。生徒たちの気が散らないように色は黒かネイビー、胸元が大きく開いたトップスは着ない、膝丈より短いスカートは履かないというコンサバな装いが習慣に。教員同士の間でも、ジーンズは履かない、ノースリーブは着ないといった暗黙のルールがありました。 プライベートで着る服も、学校に着ていく服を多少カジュアルにアレンジした程度だったので、ワードローブは自ずと「無難な服」や「周囲と調和した目立たない服」ばかり。これは『着る学校』のレッスンを受けてから気づいたことなのですが、「無難」で「周囲と調和して目立たない」というスタイルは、実は私自身の生き方と重なっていたのだと思います。そんな自分を解放したい。西先生や同期のメンバーの方々がそれぞれの個性に合ったおしゃれを楽しんでいる様子を見ているうちに、私ももっと自分の好きな服を着たいと思うようになっていきました。
◆赤いワンピースは解放の証 本音を言えば、私はきれいな色の服や柄物の服が好きなんです。特に、ペイズリー柄を見ると必ず買ってしまう。だけど、ふと我に還ると、「これは学校には着て行けない」。そんな「自分が本当に好きな服」の数々が、実はクローゼットの奥底に何枚も眠っていました。手始めに、「眠っていた服」の数々を掘り起こしてみたものの、今までコンサバな装いしかしてこなかったので、主張の強い服は何と組み合わせて、どうやって着たらいいのかわからない。そこで役に立ったのが、色や素材の組み合わせ、コーディネートする際のバランスなどの『着る学校』で学んだおしゃれの基礎知識です。それまでファッションのセンスは感覚的なものだとばかり思っていたのですが、きちんとした考え方があるということがわかり、とても参考になりました。おかげで、大好きだったペイズリー柄のブラウスや、以前は着たことがなかった花柄の服もすんなり着られるようになりました。 そして赤! 実は私は赤い色が大好きなのですが、教員時代は赤い色の服や小物はいっさい身に着けなかったんですよ。それが、近頃は、赤い色のバッグや靴を目にするとつい買っちゃって(笑)。先日の誕生日にも、夫に頼んで真っ赤なワンピースを買ってもらいました。「これ、どこに着て行くの?」と夫に聞かれましたけど、今の私ならどこにでも着て行けそうな気がします。 「服を変えれば、人生が変わる」という西先生の言葉をお借りすれば、私は着る服を変えると同時に、保守的で固定概念の塊だった自分自身を変えたかったのだと思います。教師と言う仕事柄もあったのでしょうが、「そんなことをしてはダメ」「あなたはこうあるべき」と、生徒や周囲の人たちにも無意識のうちに固定概念を押し付けてきた。でも、そんな自分とはもうさよならしたい。私が自由になれば、周囲の人たちに対してももっと寛容になれるはず。これからはそんな人間でありたいし、そのほうが人生がもっと楽しくなるのだということを『着る学校』のレッスンを通じて気づかされたのだと思います。赤いワンピースは、いわばその証。学校には絶対に着ていけませんけどね。(笑)
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