認知症の母がトイレから出てきて…にしおかすみこが見た、母がしょんぼりした理由
母、81歳、認知症&糖尿病。 姉、48歳、ダウン症。 父、82歳、酔っ払い。 私、47歳、元SMの女王様キャラの #一発屋 の女芸人。 【マンガで知る】認知症の人が見ている世界を知ると、優しくなれる 全員今でもポンコツである。 冒頭の「家族紹介」にこんなパワーワードが続くのが、にしおかすみこさんの『ポンコツ一家2年目』だ。 にしおかさんが久々に実家に帰ったとき、ゴミ屋敷のようになっている実家と、大黒柱だった母が大きく変わっていたことに衝撃を受けたのが2020年のこと。そのときから同居をはじめ、2024年で4年目になる。一度病院に行き、母が認知症だと診断されたときのエピソードは、1年目のことをまとめた書籍『ポンコツ一家』に収録されている。 1年前のことを赤裸々に綴る連載「ポンコツ一家」38回は、2023年10月のエピソード。認知症の母が「認知症」についてどのように感じているのかも伝わってきて……。
とある日の昼すぎ
2023年10月。とある日の昼すぎ。 廊下をフローリングワイパーで拭いていたら、母がトイレから出てきた。俯き、下腹部一点を見つめ「おかしいね。いつの間に」を繰り返し、黙ったと思ったらまた同じことを言い、固まったまま動かない。どこかから遠隔操作されているロボットなのかい? 私はそのまま構わず玄関まわりを掃除する。少ししてババアロボが顔を上げ、視線がこちらに向いた。やっと正常に作動し始めるようだ。 「ねえ、すみ。ちょうど良かった。この話どう思う?ママ今ね、どうしたことかパンツ3枚履いている」 履きすぎだ。誤作動上等、そんな言葉が私と母の間を浮遊する。 「何でよ。脱ぎなよ。1枚でじゅうぶんでしょ」と返したら、 「バカだね。そういうことじゃなくて、よく聞いて。ママにとって2枚履きは通常さ。1枚目は肌着として。2枚目はゆる~いコルセットみたいなもの、これは安心感のため。問題は3枚目、いつの間にか1枚目と2枚目の間に3枚目が挟まってて、それがさぁ3枚目なのに2枚目のフリして、しれっといるんだよ」。 よく聞いた上で、よくわからない。面倒くさいという気持ちと、これだけ喋れていればまだ母は大丈夫だろうと思ったりもし黙っていると、 「わかってるよ。いったいママは何が言いたいのか。だろう?急かさないでよ。つまり、その何枚目かがママの太ももの付け根を締め付けてるんだよ。さて、それはいったいどれかしら?」。 知らないよ。算数の応用問題を出されたような気になる。冒頭の母を思い出す。ああ、こんなことを逡巡し、トイレから出てきて固まっていたのか。