<レギュラーの座が厳しい最上級生>に慶應野球部メンタルコーチが送ったアドバイスとは。「成功には2種あって、大切なのは…」
2023年に開催された第105回全国高等学校野球選手権大会で、慶應義塾高等学校が107年ぶりに優勝しました。この優勝に大きく貢献したのが、メンタルコーチ・吉岡眞司さんのメンタルトレーニングです。吉岡さんは、「成果を挙げているチームは、明るく雰囲気がいい特徴が見られる」と語っていて――。今回は、吉岡さんの著書『強いチームはなぜ「明るい」のか』から、あらゆる分野に活用できるメンタル術を一部ご紹介します。 【書影】慶應義塾高校を107年ぶりの甲子園優勝に導いた、負け知らずのメンタル術。吉岡眞司『強いチームはなぜ「明るい」のか』 * * * * * * * ◆「社会的な成功」と「人間的な成功」の違い 「成功」という言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? 「今のチームでレギュラーポジションをとる」 「第一志望の**大学に合格する」 「出世して社長になる」 「億単位のお金を稼いでのんびりした老後を過ごす」 人それぞれ「成功」のイメージは異なると思います。 ただ、ここに挙げた「成功」の例はいずれも地位や肩書き、お金に関するもので、これらは「社会的な成功」です。
◆B君の相談 しかし、もう一つの大事なことがあります。それは「人間的な成功」です。 「人間的な成功」とは何でしょう? 「社会的な成功」と何が違うのか? 慶應義塾大学のB君のケースをもとにお話しします。 「レギュラーになって神宮球場の舞台に立つ」との目標を掲げ、日々の練習に打ち込むB君。 しかし、200人もの部員がひしめくチームでは、ベンチ入りすることすら簡単ではありません。B君もなかなか結果が出せず、苦しい思いをしていました。 4年生が引退し、B君を含む3年生を中心とした新チームが発足したとき、最上級生となったB君は岐路に立たされます。 「このままレギュラーを目指し続けていくのか。それとも、レギュラーはあきらめてグラウンド以外に役割を見出すべきなのか……」 私がB君から相談を受けたのは、そんな時期でした。
◆究極のゴール 「今の実力ではレギュラーに入るのは難しい。でもこれ以上どう頑張ったらいいのか。日々悶々としているんです」 「なるほど。そもそもB君はこのチームの中で、どんな部員でありたいの?」 「そうですね……。僕がプレーをすることで、一生懸命練習すれば人は必ずうまくなるということを伝えたい。後輩や小中学生などに勇気や感動を与えられる、そんな人間でありたいです」 ここでB君が目指す「レギュラーになって活躍する」ことは「社会的な成功」です。 そして、対話を通じて出てきた「後輩や小中学生に勇気や感動を与えられる人間でありたい」が「人間的な成功」です。 前者が「なりたい自分」、後者は「ありたい自分」とも言えます。 「では、『レギュラーになって活躍したい』と、『後輩や小中学生に勇気や感動を与えられる人間でありたい』。この2つの目標にあえて順番をつけるとしたら、究極のゴールはどっち?」 しばらく考え込んだ末に、B君は「後者ですね」と答えました。
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