菅義偉氏「派閥問題」で沈む今の自民党に思うこと 完全無派閥の前首相が国民の自民党離れに危機感
塩田:原点というと、「結党の原点」「党改革の原点」「与党復帰の原点」など、さまざまな受け止め方がありますが、立ち返るのは、どの問題のどういう原点ですか。 菅:政治改革に取り組んだリクルート事件のときです。 塩田:1988年6月に発覚した江副浩正・リクルート社長(当時)による未公開株式の譲渡が発端となって、自民党の派閥のトップだった中曽根康弘元首相、当時の竹下登首相、安倍晋太郎幹事長、宮沢喜一蔵相(後に首相)の各秘書や、与野党の大物政治家、中央省庁の事務次官、大手新聞社の幹部、学者、評論家などへの株譲渡が次々と明らかになり、自民党は「派閥総崩れ」となりました。その影響で、翌1989年には、竹下内閣崩壊、参議院選挙での初の与野党逆転による「衆参ねじれ」の発生、さらに1993年8月には、政権交代によって、自民党は初の野党転落という軌跡をたどりました。
菅:リクルート事件のときも、派閥解消をうたい、政治改革に取り組んだのですが、結局、派閥を解消することができませんでした。それがまさに今回、問題となっています。やはり派閥解消がスタート地点だという認識の下に、しがらみのない政治を実現することが大事だと思っています。 塩田:今回は政治資金規正法が定める政治資金収支報告書への不記載が次々と表面化し、パーティー方式による集金や資金還流など、派閥の資金システムが問題となっています。もちろん派閥解消を実現して派閥政治の根を断つことが重要ですが、派閥解消だけでなく、政治資金の公開を徹底しなければ、国民の疑惑は消えないのではないかと思います。政治資金規正法は、政治資金に関する情報公開法という面があると捉えていますが、国民の厳しい批判は、政治に携わる人たちが政治資金規正法を守らず、政治資金の公開を怠っていると見ている点も大きいのでは。
菅:私たちの政治活動の収支は当然、政治資金規正法に基づいて報告書に記載し、公開しています。そこはそれぞれの議員一人一人が責任を持って対応していくべきです。今回の派閥の問題では、記載を怠り、法律に違反してしまった。 ■自民党離れは深刻だ 塩田:最近、自民党の党員数が3万人も減ったという報道もありました。国民の自民党離れは想像以上では、と思いますが、どう受け止めていますか。 菅:私もそこは深刻だと思っています。私の選挙区(神奈川2区。横浜市西区・南区・港南区)は都市部ですから、かつてもいろいろな出来事があったとき、例えば1976年に新自由クラブが結党されたときとか、一挙に選挙の展開が変わりました。