仙女・新潟大会でのジャイアントな「箸休め」マッチに隠されていた“言葉にならない感慨”「もう今日で引退しようかな俺(笑)」
あくまで“箸休め”だが…伝わる人間には伝わる“言葉にならない感慨”
石川は現在、Evolutionという団体のプロデューサー、コーチも担当している。女子選手を育成し、弟子の1人であるChi Chiはこの新潟大会で仙女のジュニア王者になった。女子選手を育て、その戴冠を我がことのように喜ぶ石川。ササダンゴが初めて見る姿だった。 逆に言うと、石川は弟子もいる中でササダンゴ流の試合に“乗った”わけだ。 「いまレスラーライフの中で指導の比重も大きいので(Chi Chiの戴冠は)嬉しかったですね。でも師匠としては、まだまだ追いつけないぞってところを見せなくちゃと(笑)」 マット界での立ち位置は違うが「マッスル坂井さんの存在って、みなさんが思ってる以上に大きいんです」と石川は言う。 「周りの選手はみんな、坂井さんを通して“レスラーとしてどう振る舞っていくか”というのを考えさせられるんですよ。今キャリア22年目ですけど、だからこそシングルでやれてよかった。(ササダンゴは)プロレス以外でも有名な方じゃないですか。こっちも張り合いが出るんですよ。“坂井さんに負けないように頑張らないと”と思ってきたので」 言ってみれば『マッスル』出場あっての三冠ヘビー級王座獲得だった。ササダンゴにとっては、初シングルの舞台が地元・新潟であることも大きかったという。 「里村さんがこのカードを提示してくれたというか“これでどうですか”と自然になった。ちょっと言葉にならないですね......もう今日で引退しようかな俺(笑)」 この試合はあくまで“人気タレント兼レスラー登場の箸休め”であって、観客の前でことさらに感慨が表されることはなかった。それぞれの選手、試合には興行の中での役割がある。まして2人はゲスト参戦。「泣いて馬謖を斬る」ではないが、役割に殉じてこそのプロだとも言える。 しかし同時に、この試合には伝わる人間には伝わる“言葉にならない感慨”が隠されていた。里村とササダンゴの関係、ササダンゴと石川の関係、石川の弟子たちが仙女に参戦してきたこと。すべての思いと流れが重なって生まれた、新潟だからこそのジャイアントな箸休めだった。 取材・文●橋本宗洋