漁師などから直接「水産業のいま」を学び、3カ月後、レストランで料理を振る舞うプロジェクト「THE BLUE CAMP」って?
課題解決の第一歩は、「知る」こと。そして「おいしい魚を食べる」こと
――毎年、さまざまな魚が不漁だ、豊漁だとニュースで取り上げられています。「Chefs for the Blue」の活動を通して、改めて感じる海の危機はありますか? 佐々木:活動を始めてから7年が経ちますが、年々温暖化が激しくなっているのを感じます。魚たちがどんどん北上するので、かつて北海道で取れていたものが全く取れなくなったり、温暖な地域で取れるとされてきたマンボウが、北海道で取れたりするといった話をあちこちで聞きます。 ずっと不漁だといわれていたサンマが、今年は豊漁だと話題になっていますが、安いからといって決して喜んでばかりはいられない状況です。 ――日本人の「魚離れ」も問題視されています。海や水産業を取り巻く問題に興味を持ち、行動する人を増やすために、一人一人ができることはあるでしょうか? 佐々木:おいしい魚を食べていただくことが一番だと思っています。実は、今回参加したメンバーの中には、“魚嫌い”が2名いたのですが、プロジェクトを通して産地へ足を運び、おいしく調理された魚を食べたことで、2人とも大好きになったと話していました。 海や水産業を取り巻く課題を伝えようとするとき、「環境」をキーワードに進めようとすると高い壁がありますよね。 でも、「食」を入り口に「このおいしい魚を将来的にもずっと食べ続けるために、どうすればいいのか」と語りかけることで、多くの人にとって自分事として捉えやすくなるのではないでしょうか。 ――「食育」にもつながりますね。今後も「THE BLUE CAMP」の活動は続きますか? 佐々木:はい、そのつもりです。10年続ければ、160名ほどの卒業生を輩出することになります。その160名を中心に、料理人やお世話になった漁業者さん、物流の現場の方など、水産業をつなぐコミュニティが広がり、社会を変えるきっかけになればと願っています。
編集後記
「THE BLUE CAMP」に参加した学生たちの「『応援している』と言われることが悔しい」という言葉に、ハッとさせられました。 ポップアップレストランでも語られていたように、魚は無限にあるものではなく、マグロやニホンウナギをはじめ、カツオ、サバ、スルメイカなど大衆魚として親しまれてきた魚の水揚げ量も年々減少しています。 いまや世界中で親しまれている日本の「魚食文化」を、100年後の未来につなぐために、私たちも「知る」ことから始められたらと思います。
日本財団ジャーナル編集部