【社説】日米韓の連携 政権交代しても結束保て
日米韓の連携にほころびが生じることがあってはならない。政権が代わっても揺るがない協力枠組みへの強化が求められる。 石破茂首相とバイデン米大統領、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領による3カ国首脳会談が南米ペルーで開かれた。 バイデン氏は「重大な政治的変化」が訪れていると指摘し、3カ国の協力が「恒久的に存続することを期待する」と述べた。 来年1月、米国で再びトランプ政権が発足することを念頭に置いた発言だ。首脳会談の陰の主役は、この場にいないトランプ氏だった。 トランプ氏は2国間のディール(取引)を好み、多国間協力に後ろ向きな姿勢を見せている。日米韓の協調関係がトランプ政権になっても継続できるかは不透明だ。 こうした状況を踏まえ、3首脳は連携枠組みの固定化に向け、安全保障分野などの協力を調整する事務局組織の新設に合意した。 3カ国のいずれかで政権が交代して外交方針が変わったとしても、協力が後退することのないように歯止めをかける仕組みである。その効果に期待したい。 2021年に発足したバイデン政権は「格子状」と呼ばれる多国間連携を構築した。覇権主義的な動きを強める中国、核・ミサイル開発を進める北朝鮮、北朝鮮との軍事協力を深めるロシアなどに、友好国と共に対処するためだ。 米英豪による安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を始動させ、日米豪印の協力枠組み「クアッド」を閣僚級から首脳級に引き上げた。 日米韓の協力枠組みも、この「格子」の一つだ。昨年8月の首脳会談では「日米韓パートナーシップの新時代」を宣言し、首脳や閣僚が毎年定期的に会談することで一致している。トランプ政権も継承すべきだ。 トランプ政権に移行する米国と日韓の関係は、新たな事務局組織だけで発展するわけではない。日本はトランプ政権と新たな関係を築かなければならない。 石破首相は今回の外遊に合わせ、トランプ氏と面会する機会を探っていたが果たせなかった。引き続き早期の会談を求めると同時に、トランプ氏の人脈を通じて関係構築を進めたい。 トランプ政権は、日韓両国に米軍駐留経費の大幅な負担増を迫る恐れがある。米国の関税引き上げ、米中対立の影響といった点でも日韓の利害は一致する。 トランプ政権に3カ国協力をはじめ国際協調の必要性を説く上で、日韓の連携は重い意味を持つ。 トランプ氏はかつての大統領時代のように、独断で北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記とのディールに乗り出す可能性がある。 トランプ氏に慎重な対応を促すためにも、日韓の協力強化は欠かせない。
西日本新聞