長生き怖い…低所得層転落、移民送還で介護士不足。米国理想の老後はどこへ
エンド・オブ・ライフ計画
妻として、看護師として夫を看取ったナンシーさん。お子さんたちはみな遠方に住んでいるため、残り少ない余生を子どもたちの邪魔にならないよう、さまざまなプランを立てていました。日本でいう終活ですね。そのなかで実は、日本でも橋田寿賀子さんや最近亡くなった西部邁さんがきっかけで話題になった「死に方を自分で選びたい」というお話も出てきました。 体力や気力の衰えとともに孤独感や不安感は増し、何より死に際に家族に迷惑はかけたくないというあせりが付きまとう。望んで手に入れた自由な暮らしのもう一つの姿です。 ナンシーさんが使ったプラットフォームはHospice Support Fundという非営利団体が作成した「End of Life Planner」。1)重体になった時に医療を受けたい場所、2)訃報に含みたい・含みたくない情報、3)葬式のスタイル(棺桶の素材・お通夜の有無・死装束のスタイルなど)、4)埋葬方法(火葬か埋葬かなど)、4)遺産分配の必要情報(弁護士から庭師にいたるまでのコンタクトインフォメーション・スマホやパソコンなどのパスワード・銀行口座情報など)と、「死後家族が困らない」必要事項をすべて網羅しているので、「これさえ記入しておけば少なくとも家族への迷惑は減らせる」という安心感にもつながる内容となっています。 同団体によると、アメリカ人の80%が自宅での最期を望みながら、実際は75%が病院で亡くなっています。ナンシーさんは今度近くの市役所で、このプランナーを公証人(弁護士などの資格者)に法的に認証してもらうそうです。これで意識不明の状態に陥っても、病院ではなく自宅で最期まで過ごす意思を示すことができます。ナンシーさんは「死に方」こそ自分で選ぶことはできませんが(オレゴン州やカリフォルニア州など安楽死・尊厳死が一部合法な州もあります)、最愛の夫と過ごした自宅という「死に場所」を選ぶ道筋はつけることができました。