長生き怖い…低所得層転落、移民送還で介護士不足。米国理想の老後はどこへ
米国の介護事情
家族や友人に迷惑をかけないで人生の終わりを迎えたいという気持ちは、特殊な文化的背景を必要としません。しかしナンシーさんのような選択や「Life Alertのある生活」は、心と体が健康であることを大前提としています。これは実はとても幸運で贅沢なことです。 一方、一人暮らしを選択したわけではないけれど一人暮らし、という高齢者も増えています。たとえば65歳以上で離婚歴のある女性の割合は1980年の3%から2015年には13%、男性では4%から11%に増えました。2014年に一人暮らしをしている65歳~74歳の女性は4人に1人以上で、それが75歳~84歳になると42%に急上昇、85歳以上では56%というデータもあります。 そういう高齢者の心や体がひとたび健康でなくなった時、米国では誰がいったい面倒をみるのか? 答えは「家族」です。 毎年4400万人のアメリカ人が、370億時間無償で介護にあたっていますが、これを有料の自宅訪問介護サービス料金に換算すると、たとえば2009年では4500億米ドルにもなります。その83%が家族や親類を介護しており、うち24%は同居、61%が1時間以内の場所で暮らしています。ちなみに家族の中で介護をしているのは75%が女性です。 Family Caregiver Allianceという非営利団体によると、全米退職者協会(AARP)などのデータからみる米国の典型的な介護者像は、「仕事を持つ46歳の女性で、母親の介護(無償)に週20時間を費やしており、その大半は既婚、あるいはパートナーと暮らしている」というものでした。 男女ともに介護者の大半は35歳~64歳で仕事をもっており、50歳~64歳の約60%はフルタイム。2014年のデータでは、約34%が週に1~8時間、23%が41時間を介護に費やしていました。家族にとって介護が大変な負担となっていることがわかります。同データ内では、妻を介護している夫の40%がそれによって夫婦関係にヒビが入った、両親を介護する娘では30%が親子関係について同様に回答しました。