シンガポールのイスワラン前運輸相に禁錮12月の判決-収賄などで
(ブルームバーグ): シンガポールのイスワラン前運輸相が3日、収賄と司法妨害の罪で禁錮12月の実刑判決を受けた。判事は、検察官が求刑した期間よりも長い刑期を言い渡した。クリーンな統治に対するシンガポール政府の姿勢を強調するためとみられる。
ビンセント・フーン判事は「公共機関に対する信頼と信用は、効果的な統治の基盤だ。公務員個人が誠実さや説明責任の基準を下回っているとの印象を与えれば、この基盤は容易に損なわれる可能性がある」と述べた。
イスワラン氏は1975年以来、シンガポールで実刑判決を受けた初の元閣僚となった。イスワラン氏は先週、公務員の立場で贈答品を受理した罪4件と司法妨害罪1件を予想外にも認めた。同氏は以前、汚職を含む30件以上の罪状を否認するとしていたが、検察が裁判初日に罪状を修正した。
数カ月にわたるとみられていた裁判が迅速に決着したため、裕福な島国であるシンガポールのクリーンな統治に対する評判を脅かしてきたスキャンダルに、終止符が打たれる可能性がある。5月に政権を握ったウォン首相にとっては、2025年11月までに実施しなければならない総選挙で、与党・人民行動党(PAP)をリードしやすくなる。
シンガポール経営大学のユージン・タン准教授は「この判決は、あらゆる汚職犯罪に対する裁判所の強い姿勢を強調するものだ。裁判所は間違いなく、公共部門の誠実さを維持することに重点を置いている」と指摘した。
フーン判事はイスワラン氏(62)の収監日を10月7日とする要求を認めた。イスワラン氏はこの判決を不服として控訴する可能性がある。検察側が7月の刑期を求めた一方、イスワラン氏の弁護団は8週以内を求めていた。
今年初め、イスワラン氏は収賄を含む35の罪状で起訴された。同氏は、英国でのミュージカルやサッカーの試合のチケットを含む40万3000シンガポールドル(約4565万円)相当の贈答品を入手した疑いをかけられていた。起訴内容のほとんどは、シンガポール・グランプリ(GP)の権利を所有し、レースのプロモーター企業の会長を務める大富豪オン・ベンセン氏との交流に関するものだった。