「古都京都の文化財」世界遺産登録から30年、令和の難題オーバーツーリズム対策は…松井孝治市長が語る
これを1年半後をめどに引き上げて税収を増やし、歴史的な街並みの保全や、災害時に観光客の避難が想定される小中学校の空調設備の充実など、一段踏み込んだ対策を実施するつもりだ。
具体的な引き上げ額は決まっていないが、観光と市民生活の両立を進めるには、現在(24年度予算で約48億円)の倍以上の収入が必要だろう。
近隣自治体と連携し周遊できる環境へ
市民には観光客の増加に嫌悪感を抱く人もいるが、観光客が訪れることでインフラ(社会基盤)の整備が進み、利便性が向上する側面もある。こうしたことを市民に理解してもらうことが大切になる。
もちろん、過度な一極集中を避けるため、朝や夜の観光を促したり、市域を越えて京都府内各地を周遊するツアーを実施したりすることも重要だ。オーバーツーリズム対策に特効薬はなく、様々な手を打つ必要がある。
今後は、短期間で通り過ぎるのではなく、長期間滞在してもらえるような観光も目指していく必要がある。『京都市だけ良ければいい』というものではない。日本海側や宇治、大津など近隣の自治体と連携しながら、周遊してもらえる環境をつくっていきたい。
今年は、1994年に清水寺や二条城などが「古都京都の文化財」として世界遺産登録され、30年となる。来年春には大阪・関西万博が開幕する。京都にも、さらに多くの外国人観光客が訪れるだろう。京都の観光にとって、大きな転換点になる可能性がある。
これを契機に、魅力をさらに深め、世界中の人から「京都の街は素晴らしい」と言ってもらえるようにしたい。そのために、観光客の増加を想定したまちづくりにしっかり取り組んでいかなければならない。
松井孝治市長プロフィール
まつい・こうじ 1983年東大卒。通商産業省(現経済産業省)の官僚を経て2001年の参院選京都選挙区に民主党から出馬し、初当選。09年発足の鳩山内閣では官房副長官を務めた。慶応大教授を経て、今年2月の京都市長選で初当選した。同市出身。64歳。
京都市の概要
京都市の人口は約143万人(2024年11月現在)で、京都府の人口の半分以上を占める。しかし、近年は減少傾向で、特に20~30歳代の「結婚・子育て世代」が大阪府や滋賀県など近隣に流出するケースが目立つ。市は観光施策とともに、こうした人口減への対策を重視したまちづくりに取り組んでいる。