日産フェアレディ280Z(昭和53/1978年8月発売・S130型) 【昭和の名車・完全版ダイジェスト101】
80年代を見据えて正常進化したGTスポーツカー
この連載では、昭和30年~55年(1955年~1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第101回目は、GTスポーツカーの高みを目指して2代目へと進化した、日産フェアレディ280Zの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より) 【写真はこちら】 初期型の2Lモデル のZ-L 2by2。フロントバンパーにオーバーライダーがない。(全21枚)
昭和44(1969)年秋に発売され、日本のみならず海外、ことに北米で大人気を博した初代・S30型フェアレディZ。そのデザインやパッケージは1970年代を代表する量産スポーツカーの金字塔として、実に52万台超の大ヒットを記録した。 その2代目・S130型フェアレディZは、昭和53 (1978)年8月にフルモデルチェンジを受けてデビュー。初代Zのイメージを色濃く残しつつ、正常進化を遂げた。 ボディは2シーター、2by2ともにS30型よりサイズアップし、ロングノーズを一段と強調したデザインとなった。フラッグシップの280Zは、全長が2ℓ モデルより80mm長い。これは北米仕様と同じ5マイルバンパーを装着したからだ。ただし、全幅は1690mmと小型車枠の中に留められている。 パワーユニットは直列6気筒SOHCのL20系エンジンを受け継いだ。だが、厳しい53年排出ガス規制を乗り切るため、キャブレターに代えて電子制御燃料噴射装置のEGIを採用した。 もうひとつ注目したいのは、オイルショックによって日本市場から姿を消していたオーバー2ℓエンジンを積むZを復活させたことだ。新加入の280Zは2753ccのL28E型エンジンを搭載。ミッションは5速MTと3速ATを設定している。 メカニズムも進化した。ステアリングギアはクイックなラック&ピニオン式を踏襲するが、ギアやボールジョイントの摺動摩擦を低減し、剛性を強化させるなどの改良が施された。また、新たにZF社と提携し開発したボール循環式に改めたパワーステアリングもZ-LやZ-Tにオプションで用意された。 サスペンションも初代モデルの4輪ストラットから、前ストラット/後セミトレーリングアームの独立懸架に変更し、乗り心地とコントロール性を高めている。運動性能の向上とともに、フェアレディZに快適で重厚な乗り心地を与えることに大きく貢献した。ブレーキもフロントにベンチレーテッドディスクを備える4輪ディスクに変更されている。 また、S30で弱点だった空力性能も大幅に改善されている。S30がCD値0.467(国内モデル)であったものをS130では0.385という、欧州スポーツカーに匹敵する数値に改善され、前後輪揚力係数もそれぞれ0.110と0.141と、世界最高水準の数値を達成。S30で指摘されていた高速走行時のノーズリフト現象や直進安定性、横風安定性を大幅に向上させた。